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医療法人にした場合の社会保険加入

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

医療法人にした場合の社会保険加入
【2015年2月】


 近く医療法人にしようと思います。法人にすると社会保険に加入しなければならないということですが、私は勤務医時代に厚生年金に加入していたので老齢厚生年金を受けています。それでも社会保険に加入しなければなりませんか。


 基本は法人または5人以上の個人事業所は社会保険に加入しなければなりません。実際に罰せられたという話はあまり聞きませんが、30万円以下の罰金または6ヵ月以下の懲役となっていて、法律上強制加入です。


 私はすでに老齢厚生年金を受けているので、私だけ加入しないというわけにいきませんか。


 社会保険はそのような例外はありません。加入すべき人はすべて加入しなければなりません。


 加入すべき人とはどういう人をさしますか。


 社会保険に加入すべきかどうかの基準はあくまでも労働時間です。労働時間が通常の労働者の概ね4分の3以上の人は加入しなければなりません。簡単に言いますと1週間の所定労働時間が30時間以上の場合は社会保険に加入しなけれぱなりません。


 収入は関係ないのですか。ドクターによっては半日5万円で月10回ほど来てもらい、月収50万円になる人もいます。


 労働時間にしたら通常の労働者の4分の3未満ですから社会保険に加入させる必要はありません。ところで先生のところは皆さん医師国保に加入していますか。


 事情があって医師国保には加入していません。通常の国民健康保険です。


 医師国保ですと適用除外の手続きをすれぱ医師国保に加入しながら厚生年金に加入するという道もありますが、そうでない場合は「健康保険」は「協会けんぽ」に加入することになります。医師国保と比べると「協会けんぽ」は保険料がかなり割高になります。ただ「協会けんぽ」は病気で働けないときに支給される「傷病手当金」などがあり、給付は有利です。


 私の場合、老齢厚生年金を受けていても厚生年金の保険料を支払うのですか。


 そうです。それどころか現在は厚生年金に加入していないので、どれだけ収入があっても年金は減らされません。しかし、厚生年金に加入すると「在職老齢厚生年金」と言って収入によっては老齢厚生年金が減額されるか支給されないことがあります。


 私は現在65歳ですが役員報酬が多いと年金は支給されないことがありますか。


 公的年金には1階部分と2階部分があります。1階部分の老齢基礎年金はすでに受け取っていれば減らされることはありません。しかし2階部分の老齢厚生年金は標準報酬によっては減額されたり、全く支給されないこともあります。月額報酬と年金の合計が46万円までは減額されませんが、それを超えると調整されます。


 保険料負担はかなり増えますね。


 協会けんぽの保険料は給料の約10%、厚生年金は17.474%、それに労働保険が加わると給料の約30%が社会保険料になります。社会保険は労使折半で、給料額が同じなら給料を15%アップしたと同じです。それでも社会保険が完備していれば若い優秀な人にとって魅力的な職場になります。
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