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医療機関で完全歩合給は何か問題あるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

医療機関で完全歩合給は何か問題あるか
【2015年1月】


ある歯科医院で、給料を「その月に医院が上げた保険点数の何%」というように歩合制にしているところがあります。それが可能なら当院も勤務歯科医師のモチベーションを上げるために給料を歩合給にしたいと思いますが、何か問題ありますか。


労働基準法上、歩合給も認められています。ただ労働基準法では「労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」とされています。


どの程度保障すればいいのですか。最低賃金をクリアすればいいですか。


最低賃金をクリアすればいいということにはなっていません。概ね平均賃金の60%くらいが妥当と言われています。


平均賃金はどうやって計算するのですか。


通常は直近の3ヵ月間の給料を合計して3ヵ月の総日数で除して求めますが、歩合給の場合は働いた日数で除してその60%です。


そうすると、歩合給の保障給というのは、かなり低くなりますね。


最低賃金を下回ってはいけませんが保障給は思ったより少ないと思います。したがって歩合給が合わない人も出てくる可能性がありますから、その点を配慮する必要があります。


一般的に歯科医院ではどのように歩合給を定めていますか。


残念ながら給与体系でこれが正解というものはありません。どの歯科医院経営者も悩んでいます。これがいいというわけではありませんが、保険診療の何%、自由診療の何%、インプラントの何%、といった具合です。歯科医師の能力経験にもよりますから、初めは試行錯誤になると思います。このような問題こそ保険医協会などで医院経営者同士話し合い、経験交流、情報交換していただきたいと思います。


歩合給にすれば残業代は支払わなくていいのですか。


歩合給でも残業代は支払わなければなりません。


どうやって計算するのですか。


時間外手当を計算するのに一番大切なことは1時間単価を計算することです。歩合給の場合、その時間の総収入を総労働時間で除して1時間単価を算出します。そして法定労働時間を超えた時間を乗じ、さらに0.25を乗じて計算します。したがって歩合給といえども労働時間は把握しなけれぱなりません。


時間外手当は1.25倍ではないのですか。


残業手当は時間外労働×(1+0.25)ですが、歩合給の場合すでに1の部分は支払っていますから0.25の部分を支払えばいいのです。


ほかに歩合給に問題はありますか。


歩合給があまりにも前面に出ると、成果の上がりやすい仕事しかしなくなるとか、患者さんに高額な治療ばかり提案するなどの弊害が出る可能性があります。いずれにしろ医療機関で働く人はそれなりの給料も必要ですが、給料ばかりが目的ではありませんから、これを機会にどうしたら働きやすい職場になるかスタッフの要望を聞いていただきたいと思います。

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