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転勤に応じない職員への対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

転勤に応じない職員への対応
【2014年8月】

Q
 歯科医院を5力所経営しています。育児休業明けの職員に、今までとは別の医院に代わってもらえないかと提案したところ、どうしても嫌だと言います。

A
 その職員の所属していた元の医院にはどうして戻せないのですか。

Q
 あとから来た職員がやっと慣れたところなので、あまり移動などしたくはないのです。

A
 その職員が転勤を拒否する理由は何ですか。

Q
 今までは徒歩10分で通勤できました。今度の職場は自転車で10分ほどかかり通勤が大変だと言います。

A
 その方は正社員ですか。

Q
 いいえ、パートです。

A
 そうすると最初の契約がどうなっていたかがポイントになります。通常パートの場合は勤務地限定で雇用する場合が多いと思います。

Q
 当院ではこれまでも転勤は行われていました。パートの就業規則にも転勤を命ずることがある旨の記載があり、正当な理由なく転勤を拒否できないことになっています。

A
 採用の際に通知する「労働条件通知書」などにもそう書いてありますか。

Q
 最初の勤務地は書いてありますが、転勤があるとまでは書いてありません。

A
 転勤があると書いていない場合は当然、転勤を命ずることができません。それで転勤を命じた会社が裁判で負けた事例もあります。ただ、正社員であれぱ通勤時間が10分程度伸びても「通常甘受すべきものとして扱われます。今回の事例では転勤させる根拠があいまいな面もありますから、よく話し合うことが必要です。

Q
 本人は転勤するなら退職すると言っています。退職してもらってもいいのですが何か問題は起きないでしょうか。例えば「解雇予告手当」などを支払わなけれぱならないのでしょうか。

A
 本人が「退職する」と言っているのであれば解雇ではありませんから「解雇予告手当」を支払う必要はありません。

Q
 しかし本人は退職理由を「事業主都合」にしてくれと言っています。この場合、私どもに何か不都合なことはありますか。

A
  助成金が離職前後半年間支給されないことがあります。退職理由はあくまでも事実を書くべきです。

Q
 退職理由になぜこんなにこだわるのでしょうか。

A
 事業主都合であれば雇用保険給付期間が長く、また自己都合の時の3力月間の支給停止もありません。しかし、このようなトラプルが原因の場合は退職届を受け取るだけでなく、できたら「退職合意書」を取っておいた方がいいと思います。こうしておけぱ、後から「パワハラ」「セクハラ」があったとか残業代不払いがあったと不当に訴えられても被害が少なくて済みます。ある医院では看護師が自分から辞めると言って退職しましたが、後で「事実上の解雇だ」と訴えられたことがありました。

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