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「ブラック病院」とみられないために

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

「ブラック病院」とみられないために
【2013年12月】


 看護師が5人も一斉に退職しました。聞いてみると派閥があって、派閥のトップが辞めたので、同じ派閥の人が一緒に辞めたというのです。私はうかつにも、当病院の看護師間に派閥があるなど全く思いもしませんでした。こういうことはよくあるのでしょうか。

A
 看護師の退職理由の80%が人間関係と言われています。医療機関の管理者はコミュニケーションをよくし、人間関係にも気を配る必要があります。派閥を作りたがる人もいますからこのようなことは結構あります。


 早速、看護師を募集しようとしましたがなかなか採用できません。どうしたら若い方を雇えるのでしょうか。

A
 新しい看護師を募集するのは大変な苦労があり、良い方法は見当たりません。ただ言えることは若い看護師の悩みは、①人間関係、②キャリアアップができない、進路が見いだせない、③時間外労働が多い、夜勤が多い、ストレスがたまるなどです。「ブラック企業」は、残業代を支払わない、低賃金、辞めるにやめられないなどの特徴がある企業です。これと同様に「ブラック病院」も、人を粗末に扱うと従業員に思われている病院です。しかも長時労働で清潔感がなく、人間関係も悪い病院です。少なくとも「ブラック病院」とは関係ない病院でなければなりません。


 「ブラック病院」と見られないためにはどうすればいいのですか。

A
 よく言われているのは有給休暇が取りやすい職場です。有給休暇が取りやすいということは人間関係もよく、風通しもよいと言われています。従って採用でも有給休暇が取りやすいことをアピールしておくことです。採用の際、応募者が「6カ月たつと有給休暇が10日とれますか」と質問した時、明快に「取れます」と答えられないと、風通しも良くない人間関係に問題ありとみられてしまいます。


 しかし、実際には有給休暇を取らせることは難しいですね。

A
 確かに政府の定める低い診療報酬のもとでは難しいかもしれません。しかし、働く人の健康的な笑顔の満ちあふれた職場でないとこれまでの繰り返しになります。


 医療現場に限らず、一般的職場でも有給休暇は取れていないのではありませんか。

A
 そうです。日本の場合、大企業も含めて有給休暇の取得率は50%を割っています。ヨーロッパでは考えられません。マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」でも紹介されていますがヨーロッパでは4から6週間が当たり前です。


 なぜ日本は有給休暇を取らないのですか。

A
 国民性という人もいますが、ヨーロッパでも昔は長時間労働でした。この違いは労働組合の取り組みの差です。日本の労働組合は賃上げを重視してばかりで、時間短縮にはあまり力を入れない傾向にあります。


 私の病院も何とか有給休暇を取らせたいと思っているのですが。

A
 有給休暇をきちんと取って伸びている会社の事例もあります。有給休暇を取りやすくすれば社員は定着します。あるテレビ番組に出演した外国人が、日本人の気分転換はカラオケが第一位と聞いて「なぜ休暇を取らないのですか、私の場合4週間も休暇を取ればすっきりします」と言っていました。


 私の場合そんなに休暇を取ったら医院経営そのものが大変なことになってしまいます。

A
 大変でしょうが有給休暇を取れる職場にしましょう。

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