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自転車通勤のための注意点

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

自転車通勤のための注意点
【2012年2月】


 通勤経路の届けがバスと電車になっている職員が、「健康のため」といってたまに自転車で出勤します。自転車で通勤しているときに事故に遭った場合、労災保険を使えるでしょうか。

A
 労災保険はいつも使っている交通機関でなくても「合理的な経路方法」であれば通勤災害となり、労災保険から給付があります。自転車通勤の方には通勤災害には健康保険を使わないよう徹底しておくことが大切です。ある診療所で夫の健康保険の扶養家族になっているパートの職員が健康保険を使ったところ、後で通勤災害であることが分かり、療養費の返還を健保組合から求められたこともあります。


 先日、高校生が自転車で歩道を走っているとき、歩行中の高齢の女性に大怪我をさせてしまう事件がありました。もしも私のところの職員が加害者になったときは経営者の責任はどうなるのでしょうか。

A
 業務には自転車を一切使用させない、駐輪所も自分で確保するよう定めておけば経営者まで責任は及ばないと一般的には言えます。
マイカー通勤と同様、経営者の責任も広く認められるようになりました。したがって「個人賠償責任保険」に加入した者のみ自転車通勤を許可するようにするというような対策も必要になってきます。


 その場合、損害保険の保険料は従業員に負担させるべきでしょうか。診療所で負担すべきなのでしょうか。

A
 これは全く契約ですから自由に決められます。どちらかが当然負担すべきということはありません。


 自転車通勤の場合の通勤手当はどのように計算するのでしょうか。

A
 無難なのは公共交通機関を使用した場合の費用を負担するということでしょう。この方法がなじまないときは通勤手当の非課税限度額が参考になります。ただ2km未満の場合は全額課税になりますから注意が必要です。


 雨の日など傘をさして自転車通勤する者がいますが、この場合も事故を起こしてけがをしたら通勤災害として労災保険は使えますか。

A
 自転車の傘さし運転は禁止されていますが、それに違反したからと言って労災保険が使えないということはないでしょう。しかし、危険な行為ですから自転車通勤を認めるならそうした行為は禁止しておくべきです。


 自転車通動は健康にもいいと思いますがいろいろ問題がありますね。

A
 最近は自転車運転でも飲酒運転の取り締まりは厳しくなりました。自動車と同様と思った方がいいでしょう。


 罰則はありますか。

A
 無論あります。自転車通勤を認めるならば「自転車通勤規程」を作り、職員に徹底しておくことがリスク軽減になると思います。

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