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よく自動車事故を起こす職員を解雇できるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

よく自動車事故を起こす職員を解雇できるか
【2011年8月】


 3カ月前に雇用した職員が2度も自動車事故を起こしました。私どもは訪問医療を行っていますが、このような職員はいつ重大事故を起こすかわかりませんので解雇したいと思いますが可能でしょうか。

A
 どんな事故でしたか。


 一つは、バックでバンパーを電柱にぶつけました。もう一つは、車庫に入れるときサイドミラーを車庫壁にぶつけサイドミラーを壊してしまいました。

A
 人身事故はないのですか。


 人身事故は今のところありません。しかし、このままではいつ大事故を起こすか分かりません。命を守る医療機関が一般の人を傷つけたら話になりません。

A
 先生のところは、試用期間はどうなっていますか。


 以前は3カ月にしていましたが3カ月ではよくわからない点もありますので今は6カ月にしています。まだ試用期間中でもありますから解雇しても問題ないと思いますが。

A
 試用期間中であっても解雇は全くの自由というわけではありません。本採用の人よりハードルは低いもののそれなりの理由が求められます。労働契約法でも「解雇は、客観的に理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」となっています。


 「解雇」ということでなく「本採用をしない」ということであればいいのではないでしょうか。

A
 本採用拒否は解雇の場合よりも使用者の持つ契約解消の裁量権の範囲が広いと考えられますが、それでもトラブルに発展する可能性があります。どうしても退職していただきたい場合は退職届を提出してもらうよう努力すべきです。


 本人が辞めたくもないのに退職届を出すことはないのではないでしょうか。

A
 いいえ、事業主の働きかけによる退職ですから事業主から退職届を出すように要請することは問題ありません。


 どうしても辞めない場合は、どうしたらいいのですか。

A
 この決断は難しいのですが、今回は業務改善指導書を渡し、文書で本人から返事をもらっておくという方法と、本採用拒否を決断するという方法があります。広く認められるものの本採用拒否はトラブルに発展するリスクはあります。


 わかりました。もう少し検討します。それはそうと壊した自動車の修理代を本人に負担させることはできるでしょうか。

A
 先生のところの就業規則にもありますように「損害の範囲内」で本人に負担させることは可能ですが、仕事をさせて事業主も利益を得ているわけですから全額を負担させることは難しいでしょう。交通違反を繰り返す人はよく事故を起こす傾向にあります。やはり事故を起こさない人を雇用することが大切です。そのためには、最低でも自動車安全運転センターで発行する「運転記録証明書」を提出してもらう必要があります。これで過去5年間の違反記録がわかります。

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