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年金の請求は60歳からが得か65歳からが得か

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

年金の請求は60歳からが得か65歳からが得か
【2007年4月】


 私はもうすぐ60歳になります。このたび「国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書」が社会保険庁から送られてきました。年金は65歳からもらったほうが得という人もいますが、何歳から受け取ったほうがいいのでしょうか。


 昔は、自分で書類を調え年金の請求をしなければならなかったのですが、今は必要事項がほとんど書き込まれた「裁定請求書」が送られてきて大変便利になりました。先生の場合、昔勤めていて厚生年金に加入して老齢厚生年金の受給資格ができたので送られてきたわけです。先生の場合60歳からが得か65歳からが得かという問題は起きません。今すぐ請求しないと受け取る時期が遅れます。


 65歳から受け取ると増えることはないのですか。


 厚生年金の場合そういうことはありません。老齢厚生年金は年金法改正で65歳支給となってしまいました。ところが当分の間60歳から支給されることになりました。これを「老齢厚生年金」の特別支給といいます。この場合60歳から受給できますから迷うことなく請求してください。


 私の場合、厚生年金には10年しか加入していなかったのですが、それでも支給されますか。


 はい。厚生年金の期間と国民年金の期間を合算して25年以上あれば受け取ることができます。通常は、厚生年金10年分については60歳から、さらに国民年金はこれに加えて65歳から支給されます。


 私は収入がありますが、それでも年金は支給されますか。


 収入があると老齢厚生年金が減額されるかまったく支給されなくなるのは、現在厚生年金に加入している人の話です。先生の場合、個人事業主で厚生年金に加入していませんから、いくら収入が多くても老齢厚生年金は支給されます。


 私の場合64歳からは年金が増えることになっていますが、これはどういうことですか。


 老齢厚生年金は報酬比例部分と定額部分があります。報酬比例部分は標準報酬が多いほど年金が増えるというもので、定額部分は期間が同じなら誰でも年金額は同じというものです。このうち報酬比例部分は60歳から、定額部分は先生の年齢の場合64歳から支給になります。それで64歳から年金が増えることになります。


 国民年金を65歳からではなくて60歳からもらう方法もあると聞いたのですが。


 60歳から国民年金を受け取ると、国民年金部分が70%に減額され、それが一生続きます。しかも、老齢厚生年金の定額部分を受け取れなくなります。


 分かりにくいですね。


 そうです。年金を繰上げて受け取る方法は、全部繰上げと一部繰り上げがあります。説明文を読んでもよく分からないと思います。興味があれば社会保険事務所へ行って聞けば75歳までの累積額を計算してくれます。


 私の場合、国民年金は早めに受け取ったほうが得ですかね。また何歳から受け取るのが一番いいですか。


 何歳から受け取るのがいいかということは、何歳まで生きるかということが分からないと正確には算出できません。しかし、私は早めに受け取る「繰り上げ支給」は勧めていません。繰り上げて年金を受け取ると、65歳までに障害者になると通常受け取れる障害年金を受け取れなくなるなど、不利になることもあります。


 私と同い年の友人には「裁定請求書」が送られてきていません。友人も確か3年から4年厚生年金に加入したはずですが、こういう人は年金を受け取れないのでしょうか。


 その方は、厚生年金と国民年金の期間を合算して25年なかったからでしょう。共済の期間など加えると受給要件を満たす場合もありますから、年金に詳しい社会保険労務士に相談するといいと思います。

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