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65歳過ぎても老齢厚生年金が支給されない

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

65歳過ぎても老齢厚生年金が支給されない
【2016年3月】


 私は医療法人の理事長です。いわゆる団塊の世代の67歳です。老齢基礎年金は受けていますが、老齢厚生年金は支給停止になっています。これはいつまで続くのですか。


 先生は法人の役員で報酬を受けていますから高額な報酬が続く限り支給されません。


 私はこれまで月々法人負担分も含めれば11万円以上の厚生年金保険料を負担しています。これだけ保険料を納めても年金は支給されないのですか。


 そうです。報酬が高いと老齢厚生年金は支給されません。老齢厚生年金の受給額はわかりますか。


 月額にすると約13万円です。


 そうすると報酬月額60万円以上が続くと老齢厚生年金は全く支給されません。


 私は生涯現役で行きたいと思っています。そうすると今の報酬が続く限り一生老齢厚生年金は受け取れないのですか。


 そういうことになります。


 しかし、以前大きな病院に勤めていた私の友人は、今は個人開業医で年収1000万円以上ですが、老齢厚生年金を受け取っていますよ。


 個人開業医は厚生年金に加入していないので、いくら収入があっても老齢厚生年金は支給されるのです。


 私は70歳になると厚生年金は資格喪失します。そうすると老齢厚生年金は受け取れますか。


 いいえ、それでも受け取れません。70歳以上の方は「厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払い届」を提出することになっています。75歳以上になっても一定以上の報酬を得ている限り老齢厚生年金は支給されません。

◆事前確定届出給与制度の活用で年金受給を


 そうすると一生老齢厚生年金は受け取れませんね。


 考え方ですが「それほど収入があるなら年金はいらないでしょ」ということです。


 何とか受け取る方法はないのですか。


 老齢厚生年金と報酬月額の合計が47万円を超えると老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。そこで、この報酬月額を年収を変えずに下けるのです。先生の場合、年金が13万円ですから報酬月額を47万-13万=34万円以下にします。報酬月額は標準報酬月額と賞与の12分の1の合計です。厚生年金の場合賞与はどんなに受け取っても標準賞与額は1回につき150万円が限度です。150万円÷12月=12万5千円ですから月々の報酬を21万5千円にして、残りは一時金の「事前確定届出給与」で支払うのです。


 賞与は法人の役員は受け取れるのですか。


 「事前確定届出給与」ですから賞与ではありません。この手続きは税務署に対して行います。用紙は税務署にありますしインターネットでダウンロードできます。しかし、申請の期限もありますから税理士とよく相談して行ってください。


 年金も受けられるし、社会保険料もかなり少なくなりますね。


 そうです。しかし、デメリットもあります。一時にかなりの出費がかかります。それに標準報酬月額が下がりますから、万が一病気になって報酬を受けないときの傷病手当金が少なくなります。

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