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40時間労働制をクリアするために「変形労働時間制」の活用を ―曜日によって労働時間が違うときの労働時間の決め方―

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

40時間労働制をクリアするために「変形労働時間制」の活用を
―曜日によって労働時間が違うときの労働時間の決め方―
【2008年1月】


 私の診療所は、木曜日と土曜日が半休で、日曜日が休みです。月初めの週と月曜日は実働8時間を超えてしまい、残業手当を支払わなくてはなりません。全体としてはそんなに長時間労働ではないので、どうも残業手当を支払うことに抵抗があります。

A
 たしかに労働基準法では、労働者が10人以上の医療機関では、1週40時間、1日8時間と労働時間が決まっています。これを超えると時間外労働になります。しかし、最近では「変形労働時間制」を採用するところが増え、そのような問題を解決しています。


 変形労働時間制ですか。

A
 たとえば1カ月を通して、1週当たりの労働時間が40時間であれば、特定の週に40時間、あるいは特定の日に8時間を超えてもかまわないというものです。


 どういうことですか。

A
 たとえば1カ月31日の月は何週間かといいますと、1週間は7日ですから31÷7≒4.4285週となります。したがって4.4285週×40時間≒177時間、つまり1カ月の労働時間を31日の月は177時間、同様に30日の月は171時間にすれば、労働基準法のいう週40時間制はクリアできるのです。


 そうすると、たとえば月曜日に所定労働時間を9時間にしても、残業問題は発生しないのですか。

A
 そうです。ただし事前に決めておかなければなりません。


 その制度を導入するには職員との協定が必要ですか。

A
 1年単位の変形労働時間制は必要ですが、1カ月単位の変形労働時間制には必要ありません。1カ月単位の変形労働時間制を導入するには就業規則を変更すればいいのです。


 就業規則を変更するには、労働者の同意が必要なのではないですか。

A
 就業規則の変更には労働者の同意は必要ありません。労働者代表の意見を聞けばいいのです。


 反対意見が出た場合どうなるのですか。

A
 たとえ反対ということが、労働基準監督署へ提出する意見書に書いてあってもかまいません。しかし、法的にはそのような主張も成り立ちますが、職員の方への理解を得るための説明は必要でしょう。


 よく「就業規則の不利益変更は無効だ」などという話を聞きますが、労働基準監督署が認めますかね。

A
 この変更が不利益変更で無効かどうかを決めるのは裁判所です。労働基準監督署ではありません。それに不利益変更と裁判所が判断するときは、なんらの代替措置もせず退職金をなくすとか、かなりひどい場合が多いようです。先生のところは職員数も10人ちょっとですから、後々のトラブルを避けるため全員の同意を得ておけばいいと思います。


 1年間単位の変形労働時間制とはどのようなものですか。

A
 これは1年を通じて、1週間当たりの労働時間を40時間にすればいいというものです。


 具体的にいうと。

A
 たとえば1年間は365日です。これは何週間かといいますと365÷7≒52.14週となります。1週40時間ですから、1年間の所定労働時間は52.14×40≒2,085時間となります。これは労働者にかなり不利になる面もありますから「労使協定」が必要です。しかも毎年、労使協定を労働基準監督署へ提出しなければなりません。


 年間の労働時間を2,085時間にすればいいということは、具体的にはどうなりますか。

A
 たとえば1日の所定労働時間が8時間の場合、年間105日休日を与えれば週40時間制をクリアしたことになります。


  105日の休日には、年末年始や夏休み、国民の祝日も含めていいのでしょうか。

A
 そうです。ただし、事前にカレンダーを作るとか、1日10時間以上の所定労働時間は制限される、などの制約があります。


 有給休暇はどうですか。

A
 有給休暇は休日ではありませんから含まれません。休日はもともと労働義務のない日です。休暇は労働義務のある日に労働を免除される日です。

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