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36協定の様式変更で時間外労働の上限を規定

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

36協定の様式変更で時間外労働の上限を規定
【2020年5月】


 いつものように36(サブロク)協定を労働基準監督署に届けたところ、新様式に変更するようにと言って返送してきました。これまでのものではだめなのですか。


 36協定は時間外労働・休日労働に関する協定です。大企業は昨年からですが、中小企業は2020年4月1日から新様式で提出するように義務付けられました。これまで36協定さえ結べば何時間でも残業させることができましたが、時間外労働の上限が法律に規定され協定の締結方法が変わりました。働き方改革で最も重視されている長時間労働の是正が上限規制の目的です。


 私のところのような小規模の診療所にも関係がありますか。


 これまで36協定さえ結べば時間外労働の時間は青天井でしたが、上限規制により時間外労働+休日労働の合計が月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内となりました。


 それなら私のところは関係ありませんね。うちの場合、せいぜい残業は月20時間程度です。それでも、いちいち労基署へ届けなければいけないのですか。


 はい、そうです。しかし、多くの経営者や労働者は36協定の重要性について意識していません。原則として「時間外労働」は違法です。全国的には36協定なしに、あるいは36協定の限度時間を超えて労働させたとして労基署が送検する事例が結構あります。違反企業名は厚生労働省のホームページで公開されています。


 労基署は36協定のどの辺をチェックするのですか。


 従来通り労働者代表の選出方法です。それと今回から36協定届に限度時間に関するチェックボックスが設けられ、ここにチェックがないと有効でないとして返却されることもあります。それと先生のところは関係ないかもしれませんが、法的には時間外労働の限度時間は月45時間、年360時間が原則ですが、特別な事情がある場合は限度時間を超えて労働させることが可能です。その可能性のある事業場は別の様式になります。


 私のところは36協定締結の労働者の代表者を決めるときに、従業員で話し合ってもらっていますが、労働者代表の選出方法はそれでいいのでしょうか。


 挙手で決めても投票で決めてもいいのですが、真に過半数を代表する労働者でなければなりません。経営者が事実上指名するところもありますがこれでは無効です。無効な36協定に基づいて時間外労働をさせることはできません。使用者との間にトラブルが生じた労働者が、一人でも加入できる合同労組ユニオンに加入し「36協定は無効。従って無効な36協定のもとでの時間外労働は違法」として労働基準監督署へ刑事告発する事例も発生しています。こうなると労基署も送検せざるを得ません。
 私が参加したセミナーで、ある大学の労働法の教授は36協定なしに残業させると逮捕される可能性もあると言っていました。多くの経営者はこうした36協定の重要な意味について自覚がありません。昨年から労働時間把握義務が強化されています。労働時間の見直しは急務です。

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