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採用面接の際、カルト教団との関係を聞いても問題ないか【2022年9月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

採用面接の際、カルト教団との関係を聞いても問題ないか【2022年9月】


 安倍晋三元首相の殺害事件をきっかけに旧統一教会が大きな問題になっています。政界にもかなり食い込んでいることが報道されています。採用の際、カルト教団との関係を聞くことは問題ありませんか。


 旧統一教会は大きな問題になっているので、応募者が信者かどうか気になるのは仕方がないのかもしれませんが、今の日本では「信教の自由」に抵触するとして面接の際に聞いてはいけないことになっています。それと、どの職種にカルトの信者が多いといった情報がネット上などで流れていますが、根拠がないと思います。特定の職種に限らず、どのような人もカルト教団に洗脳される可能性があります。


 だからこそ、採用の際に信者かどうか確認する必要があるのではないでしょうか。私の周囲では具体的な被害についてあまり聞きませんが、新聞などでは被害が広がっていると報道されています。


 どんなに被害が出ていても、信者か否かで採用を判断するのは、「信教の自由」を侵害するとされてしまうので、それは難しいです。同様のことは思想信条にも言えます。厚生労働省は、面接の際に聞いてはいけないこととして、次のように紹介しています。
「宗教に関すること、支持政党に関すること、人生観、生活信条に関すること、尊敬する人物に関すること、思想に関すること、労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること、購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること」
 少なくとも、私が労働局に問い合わせた限りでは、これらのことを面接で聞くのは好ましくないという回答でした。とはいえ、暴力団などの反社会的勢力に関しては所属していない旨、誓約書を取ることは有効とされています。就業規則で反社会的勢力に属することを解雇事由としている会社もあります。


 そういうことであれば、旧統一教会も反社会的勢力になるのではないですか。


 旧統一教会は、法的には反社会的勢力とされていません。フランスでは信教の自由とは別の問題として、その団体が反社会的な行動をしているかどうかで判断して、カルト団体のリストに載せています。しかし、日本では政府が「反社会的勢力」の定義は困難であると閣議決定するなど、甘い対応になっています。


 若い人が影響されないか心配ですね。


 現在、就職活動で悩んでいる学生を対象に、カルト集団の魔の手が伸びています。昔、私が止めるのも聞かず、旧統一教会信者の話に聞き入り、顔つきが変わっていく学生を見たことがあります。私の学生時代の同級生も2人洗脳され、学校を去ってしまいました。一度、洗脳されると、元に戻すのはかなり困難です。
 ともかく、若者をカルト集団など不審な団体の勧誘から守ることが大切です。現在、多くの大学でも取り組みが進んでいます。私は、大阪大学が学生に注意を呼び掛けるために作成したYouTube動画のシリーズが優れていると思います。ここでは、様々な勧誘の手口が紹介されています。ネットで「大阪大学カルト」で検索すると見ることができます。

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