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契約期間中の職員の雇用を解約することは可能か【2022年7月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

契約期間中の職員の雇用を解約することは可能か【2022年7月】


 介護の送迎運転手を雇用しました。契約期間は1年ですが、どうも態度が悪く、言葉遣いも運転も乱暴で、利用者の家族からも苦情があるので、契約を解消したいと思います。トラブルなく辞めてもらいたいと思っていますが注意点はありますか。


 率直に言って契約社員の場合、期間の途中の解約を一方的にすることは難しいです。解雇についても期間の定めのない契約よりもはるかに難しいです。


 正社員でないのに難しいのですか。


 期間があるということは、この期間の雇用は保証するということです。つまり期間が来たら雇用契約は終了するが、それまではよほどのことがない限り雇用しますというものですから、一方的に解約はできません。


 30日分の予告手当を支払えば解雇できるのではありませんか。
 以前、解雇しようとした従業員が労働基準監督署に駆け込んだ時、1カ月分の賃金を支払って解決しました。今回は勤務態度に問題があるので、従業員に責任があると思っています。
 私の知人には、従業員に辞めてくれと言ったら素直に辞めたという経営者もいます。態度が悪いから辞めてもらうのは、当然ことではありませんか。


 その経営者の方は、労働者が何も権利を主張しないことが幸いしただけです。権利意識がなく、素直に従う人も中にはいるかもしれませんが極めてまれです。


 では、どうすればいいのですか。


 できれば改善点を指摘し、改めるようにしてもらうことです。


 こちらが指摘して改めるような人ではありません。どうしても辞めてもらいたいのです。


 辞めてもらうよう提案、つまり退職勧奨はできます。しかし簡単ではありません。本来なら事前に書面で注意した時のコピーなどがあればいいのですが……。


 そんな面倒なことしていませんが、口頭では何度も注意しています。


 解雇が認められるには、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当でなければなりません。このことが認められるには、労働契約で労働者に求めるものが明確になっていて、求めたことができていないことが明確でなければなりません。
 そのためには、客観的な証拠として通常はリアルな書面が必要です。注意した時、すぐに相手に渡す書面のコピーなどが、それに当たります。このコーナーで何度か紹介した業務等改善指導書(イエローカード)も、客観的な証拠になります。
 このような相談を受ける時、トラブルを起こすような人を雇用しないことが大切だとつくづく感じます。中途採用をする場合は、面接の際、履歴書に基づいて退職理由を徹底的に聞くことは最低限すべきです。それに運転手を雇用する時は、本人の了解を得て運転記録証明書を取ることも有効です。これには過去5年の交通違反歴が記載されています。この記録証明書は、地元の免許センターおよび自動車安全運転センターで取ることができます。

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