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ミスの多い職員にトラブルなく辞めてもらう方法はあるか【2022年6月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

ミスの多い職員にトラブルなく辞めてもらう方法はあるか【2022年6月】


 採用面接の時はなかなかいいなと思って採用した職員が、仕事をやらせてみたらミスが多く、仕事も遅く、能力がないので解雇したいと思っています。解雇は難しいという話を聞きますが、トラブルなく辞めてもらう方法はありますか。


 解雇とは一方的に退職させるわけですから、慎重に考える必要があります。能力がないとのことですが、採用の際、求める能力を明確に伝えましたか。


 常識の範囲のことしか求めていないので、何も伝えていません。


 その当たり前についての認識が、その職員と先生の間では大きな隔たりがあるのではないですか。


 しかし、こんな職員は初めてです。


 能力不足を理由に解雇するのであれば、求める能力を書面で明確にして、それに照らして「あなたはこれだけのことしかできない」と能力不足を説明するしかありません。多くの中小の医療機関では、その判断基準を明確にしていない例が目立ちます。従って、ほとんどの場合、裁判になると解雇が認められません。


 しかし、こんな職員を置いておくと患者にも迷惑です。


 いきなり解雇になると当人もショックでしょうし、感情的にこじれることになります。求める能力を今からでも明確にし、それに至らない場合、あるいはミスをしたときに書面で注意することが大事です。


 どんな書面ですか。


 「業務改善等指導書(イエローカード)」があります。「100の証言より1枚のリアルなペーパー」と言う弁護士もいます。問題のあった社員が、この業務改善等指導書を3回出され、自らこの職場が合わないと判断し退職した例もあるそうです。


 そんなに簡単にいかないのではないですか。


 辞めてもらうことに正当性があれば、「退職勧奨」ができます。簡単に言えば「辞めても辞めなくてもどちらでもいいが、あなたはどうもうちには合わない。他で能力を発揮した方がいいのではないですか」といった言い方で、退職を促すことです。退職勧奨は、慎重に行えば違法にはなりません。


 どんなときに違法になりますか。


 あまりにも強引と認められたときです。例えば、「退職に応じなければ解雇する」といった言い方をしたときです。


 退職を促すということですが、自己都合で辞めた場合、失業給付はすぐにもらえないですし、受給期間も短くなるので、退職に応じてもらうのは難しくないですか。


 離職票に離職理由を「事業主都合」と記入すれば、失業給付の受給条件は解雇と同じになります。納得してもらうために、解決金も検討する必要があるかもしれません。いずれにせよ、退職届か退職合意書は必要です。業務改善等指導書も含めて、これらのフォーマットは曽我社会保険労務士事務所のホームページからダウンロードできます(https://www.sogaoffice.jp/)。

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