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男性の育休取得を認めない場合、罰則はあるのか【2022年3月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

男性の育休取得を認めない場合、罰則はあるのか【2022年3月】


 育児休業は「育児・介護休業法」に基づく労働者の権利なので、性別にかかわらず、労働者から取得の申し出があった場合は、法律に定められたとおりに認めなければならないとのことでした(本誌2021年11月号当欄を参照)。認めなかった場合、罰則はありますか。


 「育児・介護休業法」自体には罰則規定はありませんが、申し出を拒否することは明確な法令違反なので、各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が調査に入り、厳しい行政指導が行われます。


 私の友人のクリニックの医院長などは、女性スタッフが妊娠したら辞めてもらうと言っていました。女性ならともかく、男が育休などあまり聞いたことはありません。


 日本の男性育休取得率は2019年度実績で7.48%でしたが、2020年は12.65%まで伸びました。しかし、他の先進国の取得率を見ると、スウェーデンは88.5%(2001年生まれの子どもをもつ父親)、2007年以前は取得率が3.5%だったドイツでも2019年には35.8%と過去最高を記録しています。
 以上のことから、日本の男性の取得率は低いといえます。その根底には、ジェンダー不平等意識が根強くあるからといわれています。


 どういうことですか。


 「ジェンダー」とは、生物学的な性別に対し、社会的・文化的役割としての性別を意味します。「料理は女性がするべきだ」「男性は泣いてはいけない」「女性は男性を立てるべきだ」といった社会通念により規定される性差はジェンダーだといえます。妊娠、出産は女性しかできませんが、育児、家事は女性がするものなどということは社会的に形成された性差意識です。例えば、「男医」という言葉はないのに「女医」という言葉はあります。これもジェンダー意識の表れだと思います。
 1990年代に先進国ではジェンダー平等が進みました。日本ではこの流れに乗り遅れました。その結果2021年版「ジェンダー・ギャップ指数」の対象世界153カ国中、日本は120位。日本よりも近代化が遅かったはずの韓国は102位、中国は107位で日本より上でした。この遅れが日本経済停滞の一因とされています。


 しかし、うちのようなところでは男性が育休を取ることは困難です。


 そのメリットも見た方がいいと思います。男性の育休取得をきっかけに業務の見直しや、女性スタッフの意識も変わることにつながり、全体として経営に好影響を与えているという報告もあります。


 それにしても、日本でも12%以上の男性が育休を取っているとのことでしたが、そんな実感はありませんね。


 多くの男性が取得しているのが、短期間の育児休暇であることも関係があるかもしれません。特に「子育てパパ支援助成金」の影響も大きいと思います。中小企業で初めて男性労働者が取得した場合、たった5日の育休で企業に57万円の助成金が支給されます。


 たった5日で57万円ですか。


 そうです。1日は休日も含んでいいので、正味4日でもいいのです。それだけでも夫が育児に参加することは、日本のジェンダー不平等を解消する大きな一歩になるのです。

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