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65歳以降も就業を希望されたが、応じなければならないか【2021年5月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

65歳以降も就業を希望されたが、応じなければならないか【2021年5月】


 当院では定年を65歳と定めていますが、来年65歳になるスタッフが引き続き働きたいと言ってきました。今まで65歳まで働いた人はいません。定年を延長すると今後スタッフの平均年齢が上がリ、職場の活気がなくなるのではないかと心配です。


 2021年4月から「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、これまでの「65歳までの雇用確保(義務)」が70歳までの就業確保(努力義務)となりました。


 70歳まで従業員を雇わなければいけないのですか。


 いいえ、必ずしも雇う必要はありません。


 どういうことですか。


 雇用ではなく「就業確保」です。例えば、これまで会計や総務の担当だった者に、スタッフの給料計算、会計処理等を委託するという方法で、就業の機会を与えるという方法も考えられるということです。


 そうだとしても、うちの診療所では難しいですね。


 労働時間を短くして、今までの仕事を続けてもらってもいいのです。


 その際、給料を下げてもいいのですか。


 中小企業においても今年の4月から「同一労働同一賃金」が実施されることになりました。この「同一労働同一賃金」については、かなり誤解があり「同じ仕事なら同じ賃金」と思ってしまう人が多いのですが、法的にそんなことを決めている国はないとのことです。
 日本で問題になっているのは、「パート・有期雇用」という就労形態を理由に、待遇の上で非正規労働者と正規雇用の労働者との間に不合理な格差があってはならないということです。以前の労働契約法20条に基づく最高裁判決で正規社員が期間雇用になり、20%程度のダウンが認められました。しかし改正パート・有期労働法では、同じ結論になるとは限らないということです。ただ労働条件、特に賃金を決めるときは、労働者とよく話し合い説明できるようにするといいと思います。
 ところで定年などという制度があるのは、先進国では日本だけと言われています。米国では年齢によって差別するのは「雇用における年齢制限禁止法」違反となります。解雇が自由と言われている米国でも、年齢によって簡単に解雇はできません。
 日本で中年にさしかかった女性を「賞味期限が切れた」などと言って雇用契約を終了させたら米国では大変なことになります。


 それでも、雇うときには米国でも年齢は聞くでしょう。


 年齢を聞いてもいいのですが、そのことによって採用しないということは法違反となります。日本でもこれからは働ける人については年齢差別をなくしていかないと世界から取り残されてしまいます。
 政府も70歳まで雇用を応援するために「65歳超雇用推進助成金」制度をつくり、60歳以上で労働者が10人未満でも定年を70歳にすれば120万円の助成金を支給するとしています。医療機関においては高齢者や女性の働く機会確保に早めに取り組むべきです。

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