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パートにも扶養手当を支払うようになるのか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

パートにも扶養手当を支払うようになるのか
【2020年12月】


 契約社員に扶養手当等が支払われないことを不当とする最高裁判決が、新聞に大きく報道されていました。私のところにもパートなど「非正規」のスタッフがいます。今後この方たちにも扶養手当などを支払わなければならなくなるのでしょうか。


 今回の最高裁の判決は「日本郵政」の契約社員についての判断ですから、直ちに非正規労働者全般に当てはまるものではありません。しかし、今後漫然としてパートなどの非正規労働者の賃金を決めることには注意が必要です。私も、よく経営者の方に従業員の賃金の決め方について聞きますが、はっきりしないところが多いです。


 そもそも「同一労働同一賃金」とはどういうことですか。


 労働法学者によれば「同一労働同一賃金」には大変な誤解があるといいます。「同一(価値)労働には、同一の賃金を支払わなければならない」という原則は諸外国においてもありません。今回の最高裁の言っていることは、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情という基準に照らして、契約社員であるというだけで不合理な扱いをしてはならないということです。扶養手当を支給しないことは不合理に当たります。


 分かりにくい説明ですね。


 簡単に言えば正社員と契約社員の間では、仕事に違いはあることを考慮しても「扶養手当」を支払わないということは不合理と断じたわけです。従って、今後は説明のつかない手当は考え直さなければなりません。


 どういうことですか。


 今回は正社員と契約社員の間での不合理についての判決ですが、パートのみの診療所でも手当の「趣旨・目的」を明確にしないと不満の種になり、訴訟などのトラブルになりかねないということです。
 私も、たまに賃金台帳を見せてもらうと「その他手当」などというものがあります。理由を開くと「早朝出勤してくれるからだ」というように、趣旨や目的がはっきりしない説明を受けることがあります。
 今の日本は正規労働者と非正規労働者との間であまりにも賃金格差があります。しかも非正規労働者が労働者の4割にも達し、実質賃金も下がりっぱなしですから、不合理な賃金体系のままだと、今後非正規の労働者から不満が大きくなると思います。


 賃金を上げたくてもなかなか大変です。


 大きくは日本の医療制度の変革が必要になるかもしれませんが、われわれ中小の経営者としては、賃金を見直し、働く者の満足を得るように努力する必要があると思います。


 難しいですね。


 確かにそうですが「人は金のみ」で働くものでもありません。ある金融機関の会長から聞きましたが、金がすべてと思われていたようなアメリカでも「ギャラップQ12」に見られるように、従業員の会社に対する愛着心や思い入れを上げる取り組みが行われています。先生も一度インターネット等で「ギャラップQ12」を検索し、目を通してみてください。

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