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メンタルの病気で出勤できない試用期間中の職員の解雇は可能か

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

メンタルの病気で出勤できない試用期間中の職員の解雇は可能か
【2019年7月】


 1ヵ月前に採用した医療事務職員が出勤しなくなってしまいました。連絡してみると体調が悪いのでしばらく休ませてくれというのです。こんな状態では困ります。まだ、試用期間中でもありますので辞めてもらいたいと思いますが、解雇しても問題ありませんか。


 試用期間中は簡単に解雇できると思っている方が多いのですが、試用期間中といえどもそう簡単ではありません。先生のところでは就業規則で試用期間を定めていますか。


 うちは職員が全部で8名ですから就業規則などありません。


 それでは雇用する時「労働条件通知書」なり「労働契約書」を渡しましたか。


 そんなことは、これまでしたことはありません。試用期間は3ヵ月と決まっているのではありませんか。


 そんなことは決まっていません。非常識な長いものは別として、企業によって自由に決められます。現に公務員は6ヵ月です。


 口頭では3ヵ月と言ったと思います。


 仮にそうだとしても、そんなに簡単ではありません。解雇問題の裁判を多く扱っているある弁護士は、正規の解雇のハードルが1メートルとすると、試用期間中はせいぜい70~80センチと説明していました。


 普通に労務提供できないのですから、解雇は可能なのではありませんか。


 可能な場合もありますが、訴訟などのリスクもあります。退職してもらいたいのであれば、まず「退職勧奨」をしたらいかがでしょうか。


 解雇とは違うのですか。


 解雇は相手の意思に関係なく一方的に退職させることです。退職勧奨は簡単に言えば「あなたはうちの医院には向かない」と伝えて納得してもらうことです。


 本人に打診したら、事業主の都合による解雇にしてくれと言うのです。解雇予告手当が受け取れるし、退職した勤め先の離職票に基づき失業給付もすぐに受給できるというのがその理由です。


 確かに、勧奨退職では解雇予告手当は受けられません。もしも、先生が金銭解決に了解できるのであれば、解決金として解雇予告手当相当額を支払う方法もあります。その上で、離職票の退職理由を「事業主の都合」とすればいいのです。そして、万が一のためには退職合意書を取り交わすことです。
 ところで、採用時にその方にメンタルの病気について聞かなかったのですか。


 病気について聞いてはいけないと思っていました。


 必ずしもそうとは言えません。業務に必要な範囲で本人の了解を得て聞くことはできます。私は、このような時のため以前このコーナーで紹介した「事前確認書」の活用を勧めています。これは労働局担当者も違法ではないと言っていました。
 人事の8割は採用です。事前の取り組みが大切です。「退職合意書」「事前確認書」どちらも当事務所のホームページからダウンロードできます(http://www.sogaoffice.jp/format/)。

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