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働き方改革でまず取り組むべきは「有給5日の義務化対応」

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

働き方改革でまず取り組むべきは「有給5日の義務化対応」
【2018年11月】


 「働き方改革」関連法案が国会で大騒ぎの末、可決されました。中小医療機関には、当面の影響としてどんなことがありますか。


 本誌9月号の本欄でも説明しましたが、「働き方国会」での最大の争点は「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」でした。簡単に言えば、高収入の一部専門職を時間の制限なく働けるようにしようというものですが、この制度は中小の医療機関には関係ありません。


 医師は「高度プロフェッショナル」に当てはまる仕事ではないのですか。


 医師は高度な仕事ではあっても、 1時間につき何人の患者を診たというように労働時間と成果とが連動します。厚生労働省の言う「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」という仕事ではありません。この問題よりも、当面はむしろ有給休暇の5日間の義務化の方が現実の影響は大きいと思います。「同一労働同一賃金制度」等と違い、 2019年4月から中小企業も猶予措置なしに始まる点も無視できません。有給休暇が10日以上ある人には、事業主は時期を指定して5日間の有給休暇を与えなければなりません。与えない場合は罰則もあります。


 有給休暇を「取りなさい」と言っているのに有休を取らない職員もいます。こういう人たちにはどう対応すればいいのですか。


 これまで日本では、労働者の申請に基づき有給休暇を与えていました。つまり労働者が申請しなければ与えなくても良かったのです。そのため有給休暇をまったく与えていない医療機関が実際ありましたが、これは先進国では日本だけです。欧州連合(EU)諸国では年度初めに労働者と話し合い、会社が有給休暇の時期を決めてしまうので、100%の取得が当たり前で取得率という考えがないのです。日本はいまだに取得率が50%未満なので、少しでも上げるために最低5日間は有給休暇を与えることを企業に義務付けたのです。


 私のところは、週2日は休みがあり祝日は無論休みです。そのほか年末年始の休みもあり私が学会に行くときは休みにしています。こんなにたくさん休みを与えているのに有休を与えなければなりませんか。


 まず、「休日」と「休暇」の違いを押さえてください。「休日」とはもともと労働義務のない日です「休暇」は労働義務のある日に労働を免除する日です。しかも給料を払えば有給休暇(ペイドホリデー)になるのです。従って有給休暇は労働基準法で義務付けられていますから休みが多いからと言って与えなくていいということにはなりません。


 私のところは週5日以上働く人は20日とは言えませんが、すべての職員は5日以上の有給休暇を取得しています。それでも5日間は事前に決めなけれはなりませんか。


 5日以上確実に取得していれば、改めて決める必要はありません。ただ、 5日以上の有給休暇の義務がありますから、これより少なくなることがないかどうか常に有給休暇の取得状況を把握する必要があります。

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