奈良県保険医協会

メニュー

10日もの連休を希望されたら、与えなければならないか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

10日もの連休を希望されたら、与えなければならないか
【2018年4月】


 結婚する職員がいます。10日間も有給休暇を取るというのですが与えなければならないのでしょうか。


 有給休暇は労働者の権利ですから請求されれば与えなければなりません。これまで結婚する人に有給休暇をどのくらい与えていたのですか。


 結婚を機に退職する職員ばかりだったので、結婚のために有給休暇を請求する職員はいませんでした。2、3日ならともかく10日も取るなど非常識ではないでしょうか。休日も含めると14日の連休になってしまいます。


 その方は1週間の所定労働日数はどのくらいで、何年勤務していますか。


 週5日働いて、勤務して5年です。


 そうすると1年で16日の有給休暇の権利があります。昨年は有給休暇をどのくらい取りましたか。


 せいぜい2~3日です。


 そうすると有給休暇の時効は2年ですからそれも加えるとさらに10日増えます。


 就業規則には忌引き休暇の規定はありますが、有給休暇の規定はありません。


 就業規則に記載してなくても労働基準法で決まっています。労基法が優先しますから就業規則に有給休暇の規定がなくても与えなければなりません。


 有給休暇を取得したときは欠勤扱いにできますか。


 有給休暇は請求した時に与えなければならないので、それはできません。ある薬局で有休を請求してきた職員に「みんなの了解を得てね」と言ったところ、その職員は有休を取らなかったものの、しばらくして退職してしまいました。
  「有給休暇年間取得率100%」とうたって職員募集したところ、多くの方が応募してきたところがあります。有給休暇の取りやすさが求人に有利に働いています。有給休暇が取れない理由の第1位が「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいない」となっています。これはある意味では危険なことです。その人しか分からない仕事が多いということが不正の温床になります。


 みんなが勝手に有給休暇を取ったら医院経営などやっていけません。


 まだまだそのような面もありますが、若者に魅力ある職場にするには有給休暇の取得拡大は必要です。欧州では有休の取得率というデータがありません。完全取得が当たり前だからです。国際労働条約(ILO条約)では休日を有給休暇に含めてはならない、しかも有給休暇のうち最低2週間は連続して与えなければならないとされています。
 残念ながら私の地元の大病院でもブラック企業並みの有給ゼロ、長時間労働当然というところがあります。だから有給など気にしなくていいということにはなりません。ある大企業は、1週間家庭に帰れないのは当たり前という超ブラック企業だったのが、有給休暇増、残業を無くすなどして増収増益になったという話もあります。これからは労働時間短縮、有給完全取得が医療機関存続の条件になるかもしれません。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示