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新人の女性看護師が、つわりがひどいという理由で勤務時間の短縮を要求してきた

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

新人の女性看護師が、つわりがひどいという理由で勤務時間の短縮を要求してきた
【2018年2月】


 入って1ヵ月の女性看護師が妊娠し、現在妊娠3ヵ月ということです。主治医の産婦人科医から勤務時間短縮の母性管理指導事項連絡力ードを貰ってきました。つわりがひどいので始業時間を1時間遅らせ、しかも1時間早く帰宅させてくれと言ってきましたが、こんなことに応じなければならないのでしょうか。


 男女雇用機会均等法により応じなければならないことになっています。


 採用の時は全く妊娠について触れていませんでした。妊娠が分かっていれは採用しませんでした。私が採用の時に妊娠しているかどうか聞いておけば良かったのでしょうか。


 いいえ、妊娠は女性特有のことですから女性であることを理由とした質問になり、男女雇用機会均等法に反します。聞くわけにはいきません。


 しかし、就職してすぐ妊娠したのでは私どものところのように少人数で運営している診療所では正常な運営ができなくなります。それでも妊娠しているかどうか聞いてはいけないのですか。


 そうです。私もその点、労働局に確認したところギリギリセーフとなる質問は「育児休業を取る予定はありますか」ならいいのではないかということでした。つまり現在は男性も育児休業を取れますから女性に限った質問ではないということです。


 就職して早々、遅く出勤するわ、早退するわというのでは診療所の予定が立ちません。解雇することはできるのでしょうか。


 男女雇用機会均等法による不利益取り扱いになりますから、そのような理由による解雇は違法になり、できません。茨城県の医療法人が妊娠を理由に解雇したとして厚生労働省に公表され、新聞でも取り上げられたことがあります。


 友人の会社で応募してきた女子高生に内定を出した後、本人から妊娠していると言ってきたので内定を辞退してもらったことがあります。妊娠していることが分かった内定者に内定辞退を申し入れることはどうですか。


 それも男女雇用機会均等法からすれば違法です。ところで先生のところは、就業規則はありますか。あるいは育児休業に関する協定はありますか。


 うちは10人未満ですから就業規則も協定もありません。


 そうすると産休明けで本人が請求すれば育児休業を与えなければなりません。


 どのくらい与えなければならないのですか。


 基本は1年です。1年たっても保育園が見付からない場合はさらに6ヵ月、さらにその時点で保育園に入れないときは2歳まで育児休業を取ることが可能になりました。


 そんなこと認められたら小さな診療所はやっていけませんよ。


 いいえ、これからは安心して育児休業が取れない事業所には職員も集まりません。むしろ育児休業を安心して取れる事業所になることが、その事業所存立の条件になりつつあります。

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