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もしかしてパワハラ? 共通のモノサシはあるのか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

もしかしてパワハラ? 共通のモノサシはあるのか
【2016年12月】


 新人の職員がパワハラを受けたと言ってきました。先輩職員から「ミスが多い」「仕事が遅い」などとかなり厳しく言われたらしいのです。私もその職員の働きぶりを見ていて、そう思う時があります。


パワハラ問題は軽視できません。厚生労働省に寄せられる労働相談のトップはいじめパワハラです。解雇退職をめぐるトラブルを抜いてしまいました。電通の女性社員過労死事件はセクハラ・パワハラもあったのではないかと思っています。ツイッターの「休日返上で作成した資料をぼろくそに言われた」「若い女の子だから見返りを要求される」という叫びを見れば明らかです。


 見返りを求めたり「ぼろくそ」に言う必要はないかもしれませんが、仕事のミスを注意するのは当たり前だと思います。そもそもパワハラとはどんな行為をいうのですか。


 厚生労働省によれば「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいう」と言っています。


 分かるような気もしますが、抽象的で分かりにくいですね。


 そうですね。それに世代により何をパワハラと感じるかは大きな隔たりがあります。最近の若い人の中には親以外から大きな声で怒鳴られたことがない人が多いそうです。


 私など先輩から結構怒鳴られました。


 いろいろな世代があります。団塊の位代、バブル期世代、就職氷河期世代、ゆとり世代、さとり世代、これらの人々が同じ職場で働くのですから、セクハラ・パワハラについてその職場にあった共通の「モノサシ」をよく話し合って作る必要があります。


 たとえばどんなことがパワハラになりますか。参考になる事例はありますか。


 厚生労働省では6項目に分けて紹介しています。①身体的な攻撃(例えば、けられたり殴られたり)②精神的な攻撃(例えば、みんなの前で、些細なミスを大きな声で叱責された)③人間関係からの切り離し(例えば、先輩・上司に挨拶しても無視され、挨拶してくれない)④過大な要求(例えば終業間際なのに過大な要求を押し付けられる)⑤過小な要求(例えば、看護師なのに受付をさせ看護師の仕事をさせない)⑥個の侵害(例えば個人所有のスマホを勝手にのぞかれる)――です。


 具体的にはどのような取り組みになりますか。


 ある病院ではトップがハラスメントを許さないというメッセージを周知し、ハラスメント防止規程の作成やアンケートに基づく研修などを実施し、成果を上げています。私が大事だなと思ったのは、トップのメッセージを一片の文書だけで終わらせないということです。声に出して語りかけることが重要だと思いました。


 口頭で語りかけることですか。


 そうです。ある医療機関で事務長が「報告はすべてメールでするように」としたところ職場の雰囲気が悪くなり退職者が相次ぎました。精神科の先生の所に伺ったとき待合室に「語らいは最良の良薬」とありました。なるほどと思いました。

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