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試用期間中といえども解雇は簡単ではない

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

試用期間中といえども解雇は簡単ではない
【2016年9月】


 新入社員を雇用しましたが能力がいまいちで積極性もありません。試用期間中なので採用取り消しにするか試用期間延長するか迷っています。試用期間中はいつでも解雇できますか。


 試用期間は「解雇権留保付きの本採用契約」と言われています。この期間に勤務態度、能力、技能、性格など見て本採用するかどうか決めるのです。しかし、いつでも解雇できるということではありません。通常の解雇がハードル1メートルだとすると試用期間中の解雇はハードル80センチくらいと思った方がいいと思います。つまり「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその権利を濫用したものとして、無効」です。


 就業規則に試用期間延長の規定があります。本人の同意を得て試用期間を延長する場合はどのくらい延長できますか。


 基本の試用期間はどのくらいですか。


 うちは3力月です。


 試用期間の長さには制限がありません。試用期間というのは雇用が不安定ということになります。あまりにも長いのは公序良俗に反しますから無効となる可能性があります。公務員の試用期間は6力月です。でも試用期間を延長するのであれば必ず期限を決め延長することになります。延長するときは再延長はなく今回の延長で最終判断をする旨伝えた方がいいと思います。この場合3力月ぐらいが妥当だと思います。私はなるべく早く決断すべきと思います。


 「本採用しない」ということは契約期間満了と同じで「解雇」ではないのではないですか。


 試用期間は「解雇権留保付きの本採用契約」と言っても継続する労働契約を打ち切るわけですから「本採用しない」ということは解雇と同じです。当然「解雇権濫用の法理」が適用されます。


 能力がないということで解雇することは難しいのですか。


 能力がないとしてやめてもらう時は、先生がどのような能力を求めているか明確に、つまり「見える化」することが大切です。つまり「あなたにはこれだけのことを求めています。しかしあなたはこれだけのことしかできません」として教育もする必要があります。どのように教育をしたか問われます。「よく教えましたがとても駄目です」というところまでいかないと本採用拒否は認められません。


 そんなことを証明するのは大変です。他の診療所では本採用しないと言ったところ、素直にやめたと言っていましたよ。


 それはたまたま労働者にも権利意識がなかったからだと思います。誤解を恐れずに言えば、今の日本では幸か不幸か労働者の働く権利についての無知に使用者側が助けられているところがあります。もしも本採用しないというのであれば「退職届」か「退職合意書」を取るべきです。「退職合意書」の見本は当事務所ホームページからダウンロードすることができます。

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