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個人開業医を除き現役中は老齢厚生年金を受け取れないことも

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

個人開業医を除き現役中は老齢厚生年金を受け取れないことも
【2016年5月】


 健康保険・厚生年金の両方から脱退すると老齢厚生年金を受け取れると本で読みました。私は55歳で現在医療法人の理事長をしていますが、法人になる前から医師国保に加入していたので「健康保険被保険者適用除外」の手続きをして現在も医師国保に加入し、健康保険に入っていない状態です。60歳で厚生年金を脱退すれば65歳から老齢厚生年金を受け取れますか。


 先生は60歳で医療法人を退職されるのですか。


 いいえ。少なくとも70歳まで今まで通り働くつもりです。


 医療法人は、厚生年金は強制加入です。したがって先生は現役でいる限り70歳まで厚生年金をやめることはできません。
 通常ですと老齢厚生年金支給開始年齢の誕生日の3ヵ月くらい前に年金機構から書類が送られてきますので、年金請求の手続きをしてください。


 老齢厚生年金は支給されないのに手続きをするのですか。


 そうです。報酬月額が高いので老齢厚生年金は支給されませんが、繰り下げ支給を希望しないのであれぱ、老齡基礎年金は支給されますから必ず手続きをしてください。


 どのくらいの収入から年金は支給されなくなりますか。


 年金の見込み額(年金事務所で調べられる)によります。仮に先生の老齢厚生年金の見込み額が月額14万円ですと、報酬月額が65万円以上になると老齢厚生年金は支給されません。


 70歳過ぎると厚生年金は加入できませんね。私も当然厚生年金をやめます。この場合老齢厚生年金は受け取れませんか。


 厚生年金に加入していなくても、働いていれば70歳以上になっても「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」提出し一定以上の報酬を得ている限り老齢厚生年金は支給されません。法人役員の老齢厚生年金については本誌3月号(※)を参照してください。 ※2016年3月「65歳過ぎても老齢厚生年金が支給されない


 私の妻は1961年生まれの眼科医で、個人で開業しています。以前、病院に勤務し厚生年金の期間が3年あります。この3年の厚生年金部分は収入のあるなしにかかわらず支給されるのではないですか。


 そうです。個人開業医は厚生年金に加入できません。厚生年金保険の被保険者ではありませんから、収入に関係なく老齢厚生年金は支給されます。


 そうすると妻は65歳から基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取れますか。


 いいえ、奥さんの老齢厚生年金は65歳ではなく経過措置として62歳から支給されます。ただし男性の場合は 1961年4月2日以降に生まれた人は、老齢厚生年金の支給開始は全員65歳です。


 男性と女性では違うのですか。


 そうです。支給開始年齢は女性の場合5年遅れになります。


 妻の場合、65歳まで待つと年金が増えることはありますか。


 増えることはありません。老齢厚生年金は本来65歳支給です。ただ経過措置として「特別支給の老齢厚生年金」は65歳前でも支給されるのです。

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