労災保険未加入中に業務災害
雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩
「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
労災保険未加入中に業務災害
【2016年4月】
Q
友人の歯科医院でパート職員が院内で転倒し腕を骨折しました。健康保険を使って治療したところ、協会けんぽ側が「業務災害なので健康保険は使えない」と言ってきました。開業したばかりでまだ労災保険の手続きをしていませんでした。この場合、負担は自費になるのでしょうか。
A
確かに健康保険は国民健康保険と違い、業務災害(労災事故)には使えません。業務災害は労災保険を使うことになっています。労災保険未加入中の業務災害でも労災保険は使えます。さかのぼって労災保険に加入すれぱいいのです。
Q
そんなことができるのですか。それなら労災事故が起きてから労災保険に加入すればいいということになりませんか。
A
そのため悪質な場合はペナルティーがあります。事業開始後1年以上加入していない場合は給付額の40%を負担し、労働基準監督署などが労災保険に加入するよう勧めたのに加入しない場合は100%負担することになります。しかし、負担するのは休業補償給付などの現金給付だけで、治療費は無料です。労災事故などで負担が大きいのは治療費ですから、ペナルティーを恐れずさかのぼって労災保険に加入手続きをするべきです。特に、開業したばかりの先生はまだ1年経っていないわけですから、基本的にはペナルティーはありません。労災保険制度は労働者保護の制度です。その事業所が労災保険に加入しないことについて労働者は何も責任がありません。事業主の怠慢で労働者が救済されないことがあってはならないという立場の保険です。
Q
手続きはどこで、どうするのですか。何か必要な書類はありますか。
A
その事業所を管轄している労働基準監督署で手続きをすることになります。通常は雇用3帳簿と言われている労働者名簿、賃金台帳出勤簿、それと労働条件を通知した労働条件通知書か労働契約書です。開業届なども求められることもありますので、事前に労働基準監督署へ電話して確認しておくといいと思います。
Q
治療費が無料ということはわかりました。しかし、まだ開業したばかりで給料は支払っていません。この場合、休業補償は出るのでしょうか。
A
業務上の傷病で働けないときは、休業補償は給付されます。
Q
しかし、賃金台帳に何もない時はどうやって休業補償の額を算出するのですか。
A
その場合は労働契約書などを参考に決定することになります。
Q
労働契約書ですか。そのようなものを出したことは私もないし、友人も労働契約書のことなど知らないと思います。
A
労働基準法第15条で「労働契約締結に際し、労働者に対して賃金、労働条件を明示しなけれぱならない」ことになっており、しかも書面で明示することになっています。ここで大切なことは、書面でしなけれぱならず、口約束ではだめだということです。書面で明示しておけぱ、採用後に求人広告と違うなどと訴えられるトラブルもなくなります。そして万がーのこのような事故でも対応できます。労働契約書のフォーマットは各都道府県労働局のホームページからダウンロードできます。ちなみに、労災事故で労働基準監督署がまずチェックするのは労災事故に遭った人が労働者かということです。特に同居の親族、たとえは'配偶者などが仕事を手伝っても労働者扱いされないことがありますから注意が必要です。
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- 2015年8月1日死亡してからも障害年金は請求できる
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- 2015年3月1日有給休暇は与えなければならないか
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- 2014年12月1日針刺し事故の使用者責任と対策
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- 2014年8月1日転勤に応じない職員への対応
- 2014年7月1日賃金は成果主義か年功賃金か
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- 2014年3月1日職員を定着させるために打つ手は
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- 2013年2月1日契約更新を繰り返してきたパートも5/を超えると無期契約になる
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- 2012年4月1日労災保険未加入中の労災事故
- 2012年3月1日病気退職を希望する職員の保険と年金
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- 2011年9月1日年金事務所の調査とは
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- 2007年8月1日宙に浮いた年金・消えた年金の対策は… 意外に多い医師の無年金者
- 2007年7月1日個人診療所の厚生年金加入手続きは
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- 2007年5月1日ドクターも雇用保険に入れるのか
- 2007年4月1日年金の請求は60歳からが得か65歳からが得か
- 2007年3月1日人材に苦労している経営者の特徴
- 2007年2月1日転勤に応じない職員の対応
- 2007年1月1日能力が低く勤務態度の悪い職員の解雇
- 2006年12月1日管理職には残業代を支払わなくていいか
- 2006年11月1日採用のとき病歴について聞けるか
- 2006年10月1日労働基準法は守らなければならない法律になった
- 2006年9月1日労働基準監督署が抜き打ち検査に来て 残業手当を遡って支払えといってきた
- 2006年7月1日中小企業子育て支援助成金 育児休業を取らせると助成金100万円
- 2006年6月1日労災保険未加入のペナルティー強化
- 2006年5月1日政府は国民年金未納保険医を「指定更新しない」といっている。今から保険料を支払っても間に合うか
- 2006年4月1日引き継ぎもしないで突然退職する職員への対処は
- 2006年3月1日1カ月単位の変形労働時間制
- 2006年2月1日労働基準監督署調査及び労働基準監督署の是正勧告への対応
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