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急に職員が退職。原因はパワハラか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

急に職員が退職。原因はパワハラか
【2015年9月】


 当院はスタッフ8人の歯科医院です。2年ほど勤務した職員が急に退職しました。退職理由は「家庭の事情」とのことでしたが、どうも外では「パワハラ」だと言っているようです。私は全く思い当たらないのですが、今後どのようなことに気をつければいいのでしょうか。


 都道府県の労働局に寄せられる企業と労働者の紛争に関する相談件数で、最近「いじめ・嫌がらせ」(パワハラ)に関するものが急速に増え、2013年度にはとうとう解雇を抜いて相談件数のトップになりました。パワハラに関する裁判も増加がうかがわれます。このうちパワハラを受けたとする従業員の半数が何もしなかったということでした。先生のところの職員も理由も言わずに退職したのはこのようなことかもしれません。退職理由で「家庭の事情」の90%以上は本当は別の理由だそうです。


 そうですか。私には全く思い当たりませんでした。


 よくコンビを組んで仕事をしているとき相方が「ミスが多い」とか「仕事が遅い」など不満があり、それに伴いきつく当たることがパワハラと受け止められ、一方が退職ということもあり、自殺するケースすらあります。


 大事に至る前に、仕事はできるが同僚に厳しく当たる職員に注意しておいた方がいいですか。


 そうしたことでうまくいけば苦労はないのですが、かえって人間関係が壊れることが多いです。「誰が言ったんですか。私は間違っていません」というようなことになります。また、先生ご自身が原因の時もあります。以前私が退職者に退職の本当の理由を聞いたところ「医院長がわがまま、自分勝手、人の意見を聞かない、大きな声で怒鳴るから」と言われたことがありました。ある会社で、同様なことがあったので社長に「社長は話を聞いてくれないと言っていましたよ」と言ったところ、その社長は「当たり前だ。あんなやつの話など聞くわけないだろう」という返事でした。


 それでは解決しませんね。具体的にどのような対策が考えられますか。


 何と言ってもコミュニケーションをよくすることだと思います。先生のところはスタッフ8人ということですが個別に面談することはありますか。


 みんなで話し合うことはあっても個別面談はしてきませんでした。


 できたら給料を渡すときなどに個別に悩みなどを聞くこともいいと思います。秘密が守られることがわかれば本音で仕事上の悩みなどを語ってくれることもあります。ひたすら聞くだけでかなり解決すると言われています。


 メールでのコミュニケーションはどうですか。


 いじめパワハラ問題では、メールはやめた方がいいと思います。メールのやり取りを見ているとだんだん激しくなっていくこともあります。メールはこじれる原因にもなります。やはり語ることがコミュニケーションでは大切です。精神科の先生から「語らいは最良の良薬」と聞いたことがあります。パワハラ問題では『職場のパワーハラスメント対策ハンドブック』(厚生労働省委託事業21世紀職業財団)は無料で都道府県労働局で入手できます。厚生労働省ホームページ「明るい職場応援団」にはたくさんの解決事例などの情報があります。

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