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残業させるにも協定が必要

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

残業させるにも協定が必要
【2015年4月】


 労働基準監督官が突然来て、賃金台帳や出勤簿を見たいとか、時間外労働をしているかどうかなど尋ねられました。労働基準監督官は何の前触れもなく突然調査に来ていいのですか。税務署ですら来るときは事前に通知があります。


 労働基準監督官は抜き打ちで調査に行くよう指導されているそうです。これはILO条約でも規定されています。労働基準法でも、事業所に臨検し「帳簿及び書類の提出を求め、または使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」(労働基準法第101条)となっています。


 税務署の調査の時はいつも2人で来ますが、労働基準監督署からは若い女性の監督官が1人で来ました。初めは最近はやりの詐欺かと思いました。


 監督官は身分を証明する証票を携帯することになっていますから、それを確認することはできますし、必要なことです。監督官が1人で来るのは、日本は労働基準監督官が少ないからだと思います。国際的には労働者1万人に監督官1人と言われています。日本でいえば6000人ということになりますが、実際はその半分くらいです。


 通常はどういうことを尋ねるのですか。


 多いのは就業規則の確認です。労働者が10人以上いれば就業規則を労働基準監督署に提出しなければなりません。それから出勤簿を確認し、時間外労働がある場合は時間外協定があるかどうかを確認します。


 私が勤務医の時は時間外協定のことなど全く聞いたことはありませんでした。時間外労働させても残業手当を支払っていればいいと思っていました。


 従業員が10人以上いるところは 1週40時間1日8時間以上労働させてはならないことになっています。これを超えて働かせることは違法であり罰則があります。ただ、労働者の過半数を代表するものと書面による協定を結び、労働基準監督署に届けた場合はこの時間を超えて労働させることができることになっています。このことが労働基準法第36条に書いてあるので、時間外協定を「36(さぶろく)協定」といます。


 当院は常勤の医師は私ひとりで、臨時の医師も何人か来てもらい、常時医師は4人で診療をしています。過半数を代表するものといいますが、1週間に1日しか来ない臨時の医師などは人数にカウントされるのですか。


 医師といえども労働者ですから、1週間に1日しか来ない人も労働者にカウントされます。


 病気で休んでいる人はどうですか。


 当然、労働者の人数にカウントされます。


 代表はどうやって決めるのですか。選挙ですか。


 選任方法については規定されていません。みんなで話し合って決めても良いし、立候補した人を信任投票しても良いし、メールの投票でも可能です。これからは時間外協定に関しては選任の方法が重視されてくると思います。労働者代表の選任方法がいい加減で時間外労働が認められず、巨額の解決金を支払うことになった企業もあります。

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