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労働契約を打ち切るときは、相手側の立場に立って

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

労働契約を打ち切るときは、相手側の立場に立って
【2014年6月】


 6力月ごとに更新している医療事務のパートがいます。3度更新しましたがミスが多く次回の更新はやめようと思っています。当人は引き続き勤めたいようですが一方的に終了を告げてもよいのでしょうか。


 有期労働契約は、契約期間の満了により雇用が終了します。これを「雇止め」と言います。雇止めは労働者保護の観点から、一定の条件で無効となる最高裁判例があります。判例上のルール(雇止め法理)が確立し、現在では労働契約法に条文化されています。該当者の「雇止め」可否に関しても「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」に該当しないのかが問われます。


 ミスが多く、これ以上雇用するのは無理だと思いますから、雇止めは当然だと思います。


 これまでの間、ミスについて該当者に指摘してきましたか。


 散々ミスをしているのですから、指摘がなくても本人も分かっていると思います。


 指摘がないということで、当人は多少のミスは許されると思っているのかもしれません。契約更新の際に契約書を作成し、事前に面談し、更新の有無を決定していますか。


 当医院で作成した労働契約書を渡しながら、面談をしています。次も「頑張ってくれ」と言っています。


 本来であれぱ、問題点を指摘し、改善しなけれぱ次の更新はないと意思表示しておくべきです。労働契約書も労働局のホームページでダウンロードできるものを参考にしたほうがいいと思います。問題点の指摘は口頭でよいのですが、度重なれば「業務改善指導書」(イエローカード)を出しておくべきです。争いになった時は、口頭で何度も注意したと言っても証拠になりません。


 雇止めの契約書はどのように書けばいいのでしょうか。


 双方合意のもとで「今回の更新が最後」という文言を契約書に入れておくべきです。


 更新のたびに「今回の更新が最後」と契約書に入れておけぱ、更新しないときの争いはなくなりますね。


 いいえ、常に「今回限りの特約」を付けていると、真の合意があるとは言えませんからトラプルのもとになります。
 契約を更新したくないときは、雇止めの理由を明確にし、雇用期間か1年を超えているときは、少なくとも雇用期間が満了する30日前までに予告する必要があります。通告内容は難しいのですが、これまで縁あって働いていただいたことに感謝し、誠意ある対応を示す必要があります。


 しかし、これまでミスが多く、患者さんからも不満がありました。むしろ私のほうが被害者です。


 お気持ちはわかりますが、契約を打ち切られる相手側の立場に立つことも大切です。
 労働契約法の労働契約更新に関し「合理的な理由」があると認められるときは雇止めが無効となります。日立メディコ事件の原告から話を聞くことがありました。この時の会社側の対応はあまりにも粗末に期間工労働者を扱ったということでした。会社側が誠意をもって対応していれぱ15年にも及ぶ裁判にはならなかったということです。会社側の出費も半端ではなかったということです。労働契約の解消は採用時の10倍のエネルギーがいると言われています。労働契約更新の拒否は慎重であるべきです。

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