奈良県保険医協会

メニュー

女性職員との関係を理由に解雇できるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

女性職員との関係を理由に解雇できるか
【2014年4月】

Q
 私の医院は職員25人の診療所です。妻子ある事務主任と、夫がいる女子パート職員が不倫関係にあるということが表面化してきました。この場合、この主任を解雇することは可能でしょうか。

A
 一般論としては私生活のことですから、解雇とか懲戒解雇は無理だと思います。

Q
 しかし、一部職員の間ではうわさになっていて、正常な業務に影響が出始めています。当院では給料日に、主任以上の職員と医院長との面接があります。この時、主任として責任感を持ち、家庭も大事にしてほしいと遠まわしに話をしましたが、主任は全く理解していないようです。これでも解雇はできませんか。

A
 セクハラによる争いは増えたものの、不倫を事由に解雇され、裁判となった事例はあまりありません。よく例示されるのは、妻子ある観光バスの運転手が、同じ職場に勤務する未成年の女子車掌と長期にわたり不倫関係にあり、その挙げ句、妊娠させ中絶手術を受けて退職する事件が起きました。一審では解雇無効となりましたが高裁では解雇を認めました。

Q
 それではこの事例でも解雇は可能ですか。

A
 バス会社の事例は極端なもので、会社の業務、体面や信用にかなり影響したことが証明されたから解雇も認められましたが、このケースでは解雇が有効になるかどうかは分かりません。

Q
 診療所が不倫の場に使われたくありません。両者を部署替えすることは可能でしょうか。

A
 部署替えは経営者の人事権に属しますから、よほと不純な動機がない限り可能です。セクハラによる部署替えはセクハラした人を部署替えすべきですが、今回の場合はどちらを部署替えするか慎重にすべきです。しかし、不倫は再犯性がありますから根本的な解決にはならないと思います。

Q
 2人とも解雇なり退職させる方策はないのでしょうか。

A
 先ほども申しあげたように解雇は難しいと思います。意見の分かれるところですが、私としては警告をするなり、執拗でなければ退職勧奨は可能だと思います。ある医療機関では妻子ある事務長と、夫と子どものいる女性パートとの不倫が発覚し、パート側の姑から苦惰が寄せられたので退職勧奨したところ、パート職員は退職届を提出し、退職しました。ところが事務長は、また他の女性パートと不倫をしました。これが表面化し、今度は事務長も自ら退職していきました。
 先生のところでは就業規則、服務規程で「職場内の異性との交際については特に、慎まなけれぱならない」。また解雇の事由として「著しく風紀・秩序を乱して医院の体面を汚し、損害を与えた時」などの規定を記載していますか。

Q
 今まで事例がなかったので記載はありません。

A
 最低でも就業規則を見直し改定し、経営者の固い決意を周知徹底させることが防止策になります。

Q
 防犯対策を口実に監視カメラを増やすことはどうでしょうか。

A
 監視カメラを増やすことは不倫の対策になるかもしれませんが、職場の雰囲気が悪くなると思います。そちらのほうが心配です。しかし、多くの事例では不倫が表面化すると2人とも退職していくようです。

Q
 そういうものですか。難しいですね。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示