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職員を定着させるために打つ手は

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

職員を定着させるために打つ手は
【2014年3月】

Q
 職員数人の診療所です。最近、新入社員の受付職員が2人退職しました。なかなか受付職員が定着しません。何か私に問題があるのか自信が無くなってきました。

A
 退職者に退職原因を聞いたことはありますか。

Q
 当初、思ってることと違うと言っていましたが、はっきりしたことはわかりません。労働条件が希望とは違ったみたいです。

A
 退職者はなかなか本音を言いませんからね。私は人事がうまくいく8割は採用だと思っています。採用時はどのような事をしていますか。

Q
 求人広告やハローワークに求人を出し、面接をして決めています。面接で波長の合う応募者を採用していますが、これがなかなかうまくいきません。

A
 大企業でも莫大な費用をかけて新卒を採用していますが、それでもかならずしもうまくいっていないようです。したがって採用が難しいのは当然です。
私の事務所では、少しでも多くの人の中から選ぶようにしています。まず書類選考では直筆の履歴書と、直筆の400字程度の志望動機を送ってもらいます。応募者の中から面接対象を5人くらいに絞り、面接日の打ち合わせのため電話をします。この電話が大切です。電話の声はその人の人柄が出ると思います。診療所では特に電話の応対は大切です。

Q
 面接時には、どのような対応が心要ですか。

A
 我々のところに来る方はほとんどが中途採用者です。職務履歴は履歴書に書いてあるだけかどうか確認し、たとえ数カ月でも勤務したことがあれぱ全て書いてもらい、退職理由を聞くようにしています。
 労務問題を扱っている弁護上によるとこの確認だけでトラブルの8割は防げるということです。さらに経営者側弁護士の考案した「事前確認書」に健康問題などを書いてもらいます。

Q
 健康問題などを質問してもいいのですか。

A
 健康な人を雇いたいという使用者の希望は当然ですし、メンタルヘルス情報も例外ではありません。逆に採用後にメンタル不全であることが発覚しても、採用に当たりメンタル不全について聞いていなけれぱ解雇事由にもならないという弁護士もいます。ある経営者の方がこの「事前確認書」を労働局に持って行って確認したところ、最終的に「違法ではない」という見解でした。

Q
 求人票通りの条件で雇用しなければなりませんか。

A
 条件があまりにもかけ離れていると問題ですが、最終的には労働契約書です。労働基準監督署の調査では必ず労働条件通知書などをチェックしますが、労働契約の内容を書面で示していないところが多いのです。口約束だけですと「求人広告の内容が労働契約とちがう」と言われる恐れがあります。

Q
 どうしても駄目な人は、試用期間中であれぱ本採用を取り消してもいいのでしょうか。

A
 それは大変な誤解です。試用期問中といえども簡単に解雇はできません。採用のハードルが少し低い程度と思えばいいでしょう。できたら勧奨による退職として退職届をもらっておくといいでしょう。
 私は人件費を「経費」ではなく投資と思っています。1年以内で退職されたのでは、それまでの人件費は無駄になってしまいます。職員定着のためには職員をどう見るかということがポイントです。
 人は自分を評価してくれる人のためには尽くすものです。

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