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職員の定着には有給休暇が有効。有給休暇の取りやすさは人間関係のバロメーター

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

職員の定着には有給休暇が有効。有給休暇の取りやすさは人間関係のバロメーター
【2014年2月】

Q
 職員がなかなか定着しません。定着させる良い方法はありませんか。

A
 正解は簡単に見つかりませんが、先生はどのようにお考えですか。

Q
 定着しない要因は人間関係でしょうか。

A
 訪問看護ステーションの経営者から聞いたところでは、看護師の退職理由の80%が人間関係ということだそうです。しかし、理由は人間関係ばかりではありませんから、退職を希望している職員から直接話を聞くべきです。
退職を希望するある看護師師に理由を聞いたところ、「本当は転職したくないけど息子が大学に進学したので、収入がもう少し必要なので、夜勤がある病院に勤務したい」、「母子家庭なので月に4万円増えれぱ…」ということでした。そこで4年間の条件を付け、子女教育手当を支給することにして退職を思いとどまってもらった事例もあります。

Q
 思い通りに休めないという若い看護師からの不満の声もあります。有給休暇は与えなけれぱいけないのでしょうか。

A
 有給休暇が取りにくいという不満は、人間関係がうまくできていないメッセージだと受けとめることが必要です。中小の医療機関の場合、有給休暇が取れるということは、同僚に負担をかけることにつながります。遠慮なく有給休暇がとれる人間関係ができているかどうかが定着してもらう上で重要です。

Q
 難しいことですね。みんなが勝手に有給休暇をとったら医院は回っていきません。

A
 確かにそのような面はあると思います。しかし、これからは発想を変え「仕事と生活の調和」(ワークライフ・バランス)を考えていく必要があります。日本人は有給休暇を取らない国民性であるなどと言っている人もいますが、ある企業では、有給休暇を年間40日も取りながら成果をあげています。この企業は年間休日140日、そのうえ有給休暇が40日あります。それでも創業以来40年以上黒字です。

Q
 夢のような話ですね。医療費を圧縮している日本で、医療機関がそのようなことをするのは無理でしょう。

A
 現在はそうかもしれませんが、医療機関においても十分有給休暇を取るようにしなければならないという方向性は押さえておく必要があります。学術会議の報告では、1力月の休日が4日以下の医師が46%います。労働基準法では1週1日の休みが義務付けられていますので、多くの医療機関で労働基準法に抵触する恐れもあると思っています。

Q
 そうした中で、有給休暇を取りやすくして人間関係を改善しスタッフの定着をはかることは大変ですね。

A
 しかし、そのようにしたいという院長のメッセージを伝えることが大切です。保険医協会の歯科会員でパートさんを上手に活用し、時間短縮と有給休暇取得促進に取り組んでいる方もいます。

Q
 そうですか。しかし、有給休暇取得にはどうしてもためらいがありますね。

A
 確かに、働くことはいいことです。しかし、低賃金だから長時問労働しなければ生活できないという深刻な問題と結ぴついています。長時間・低賃金の問題は、労働組合をはじめ政治家がもっと真剣になって改善していかなけれぱいけないと思います。長時間労働による医師の過労が医療ミスを生んでいます。医療ミスの最大の原因は過労によるものだと私は考えています。

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