奈良県保険医協会

メニュー

ホスピタリティは教えられない?

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

ホスピタリティは教えられない?
【2013年9月】


 夫は整形外科医院を経営し、私は事務長をしています。午後の診療時間は、平日は14時45分から17時までです。17時過ぎに、高齢の女性が遅くなって申し訳なさそうに、診察券を渡そうとしました。すると受付担当者が「受付時間が終了しました」と言って、明日来るように言うのです。私はあわてて受付するように言いました。受付担当者は不満顔でしたが、受付をしました。患者さんが少しぐらい遅れてきても、受付するように就業規則に記載することはできないのでしょうか。

A
 記載できないことはないと思いますが、少し違和感がありますね。なぜ17時過ぎると受付を断ろうとするのですか。


 当医院の終業時刻は18時です。それまでに仕事が終わらないからだと思います。

A
 18時までしか就業できない事情があるのではないでしょうか。例えば保育園に子どもを迎えに行かなければならないとか…。


 そうかもしれませんが、私どもの診療所は整形外科ですから、足腰の悪い人も多く、やっとの思いで来院してくる人も多いと思います。私としては多少遅れてきても受付して診察・治療するのは当たり前だと思います。帰らなければならない事情があるなら、相談してくれればいいと思います。

A
 受付職員としては17時までの受付が決まりだから、断っていいと思っているのかもしれません。院長は遅れてきても受付しなさいと言っているのですか。


 診療時間は気にしていないと思います。

A
 そうですか。しかし、これは就業規則以前の問題のような気がします。どのような時は受付して良いとか、新しい問題が出てきた時、どうするかなど話し合っておくべきではないでしょうか。


 大病院でもない私どもの診療所では、足の痛さを我慢して、やっと来てくれた患者さんに対し、多少遅れて来院しても、特別な指示なしで受付する「思いやり」を持つのは当たり前ではないのですか。

A
 患者さんに対する接し方などを教えれば、「思いやり」について考えるようになるかもしれません。その結果、思いやりに満ちた仕事をするようになるかもしれません。


 教えれば誰でも思いやりの気持ちを持てるのでしょうか。

A
 これの難しさは、教えれば誰でも思いやりの気持ちを持てるというものではないということです。ある有名レストラン経営者が「ホスピタリティは教えられない」と言っているそうです。ホスピタリティのある人は、それを成長させることができますが、ない人はどうしようもないということです。対策はホスピタリティのある人を見抜いて採用するしかないようです。


 難しいですね。

A
 そうですね。私はかねがね人事の8割は採用だと思っています。採用にもっと力を入れてよいと思います。あまりにも安易に採用し、後悔している医療機関が多いように思います。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示