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65歳までの希望者全員雇用の義務化

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

65歳までの希望者全員雇用の義務化
【2013年1月】


  法改正で65歳まで全員雇用しなければいけなくなったということですが、定年を65歳にしなければいけないということですか。

A
  定年延長ではなく、再雇用でも良いので、希望する従業員全員を65歳まで雇用する制度を作らなければならないということです。


  それでは定年は60歳のままでいいのですね。

A
  そうです。これまでもそうですが事業主に①定年の引き上げ②継続雇用制度の導入③定年の廃止一などにより65歳まで雇用するように求められています。ただし、従来は②について、労使協定で遅刻の回数や、一定の資格、評価などの基準を設け、それに達しない者は継続雇用しない制度を設けてかまわない、となっていました。それが今回、このように対象者を限定できる仕組みを基本的になくしました。


  これまで継続雇用をするためにいろいろ基準を設けていましたが、これらの基準は廃止しなければなりませんか。

A
  基本は廃止ですが経過措置があります。年金の支給開始年齢は男子については来年度から支給開始が61歳になります。これに合わせ61歳まで希望者全員を雇用しなければならなくなりました。ただし、61歳以降に関しては従来どおり基準に基づき継続雇用するかどうか判断しても構わないことになります。これが順次引き上げられ2016年には62歳、2019年には63歳、2025年からは65歳になります。


  そうするとかなり経過措置の期間が長くなりますね。

A
  そうです。継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが完全に廃止されるのは2025年4月からということになります。そうはいっても基準に基づき条件を満たしていないとして継続雇用されなかった事例は全国で2%に満たなかったということです。したがって多くの企業は実際上は65歳までその人の能力など気にせず雇用継続してきました。


  高齢者がいつまでも働いていると、若者の働き口が無くなるということになりませんか。

A
  若者の働く場所がないというのは高齢者が働くからではありません。日本全体の労働者の働き方によるものです。


  どういうことですか。

A
  30代男性労働者の5人に1人が過労死予備軍ともいうべき1週間に60時間、月間にしたら残業80時間以上も働いています。私は、これが若者の働く場を奪う最も大きな原因だと思います。それに有給休暇の取得率も、先進国では100%が当たり前ですが、日本全体では50%にも満たない有様です。日本の労働者が有給休暇を100%取得すれば、その経済効果は12兆円から15兆円、新たに188万人の雇用を生み出すと言われています。


  そういう見方もあるかもしれませんが、60歳を過ぎると労働能力も低下するのではありませんか。

A
  それは仕事によると思います。ある医院では、看護師がどうしても足りないので退職したばかりの70歳を過ぎた看護師に来てもらったところ、大変助かっているということでした。暦年齢だけで判断すべきではないと思います。「人間は他人から必要とされることを必要とする生き物」と言われています。

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