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採用時に健康問題や交通事故歴を聞いても良いか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

採用時に健康問題や交通事故歴を聞いても良いか
【2012年11月】


 2カ月前に雇用した職員が急に出勤しなくなってしまいました。どうもメンタルの病気のようです。

A
  採用の時、病歴などについて聞かなかったのですか。


 電話でハローワークに聞いたところ「病歴について聞くのはまずい」という回答だったので聞きませんでした。

A
  確かに厚生労働省が「採用選考時の健康診断について」という事務連絡で適性と能力を判断するうえで必要のない事項を把握する恐れがあるとしているので、そのようなハローワークの回答になったのだと思います。しかし、経営者も当初予定した健康な状態で労務の提供を労働者に要求するのは当然です。業務に必要な健康問題について聞くのは当然です。入社前健康診断を正当化する裁判例もあるほどです。


 病歴については聞きにくいですね。

A
  そういうことであれば「事前確認書」をいただいたらどうでしょうか。書きたくない場合は書かなくて良いということを伝え、病歴や履歴書に記載された会社の退職理由など書いてもらえばいいのです。


 私のところは訪問診療です。交通事故歴についても聞いていいのでしょうか。

A
  当然です。頻繁に自動車を運転することが予定されている方には各都道府県にある自動車安全運転センターで「運転記録証明書」を取ってもらってください。


 運転記録証明書ですか。どういうものですか。

A
  この5年間の違反歴(交通違反、交通事故、運転免許の行政処分)がすべて記録されたものです。職員が重大な事故を起こした場合、このような初歩的な調査をしなかったとしたら会社の責任も重いと思います。


 運転記録証明書を取る手続きは本人でなくてもできますか。

A
  委任状があれば本人以外でも取れます。そのほか退職理由について聞くことも大切です。この退職理由を徹底的に聞くことでトラブルの8割は防げるという弁護士もいるほどです。これも「事前確認書」に書いてもらえばいいのです。


 自分に不利なことは書かないのではないでしょうか。また虚偽の申請をするかもしれないのではないですか。

A
  そのような場合、就業規則に事前確認書に虚偽の申告をした場合は「懲戒解雇」の対象になる旨記載しておけば良いでしょう。


 先ほどの休んでいる試用期間中の職員の場合、解雇はできますか。

A
  試用期間は「解雇権留保付の本採用契約」と言われています。だからと言って簡単に本採用を拒否(解雇)できるわけではありません。通常の解雇がハードル1メートルとすれば試用期間中の解雇は80センチとも言われています。したがって今後のトラブルを避けるため、話し合って「退職届」を提出するよう努力すべきと思います。


 前職があるのでこの人は雇用保険が受けられます。退職届を出すと失業給付が不利になりませんか。

A
  事業主の勧奨による退職は解雇と同じです。

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