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給料の決め方・考え方

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

給料の決め方・考え方
【2012年5月】


 私の診療所では給料についてかなり不満が多いようです。コンサルタントに頼めば、従業員がやる気になり経営者に負担のない賃金制度を作ってもらえるでしょうか。

A
 プロがいつでも良い賃金制度を作れるというものではありません。従業員が30人程度のある会社で、コンサルタントに400万円かけて作ってもらった賃金制度が1年で使えなくなった例があります。


 どうすれば良い賃金制度ができると考えていますか。

A
 まず押さえていただきたいのは、賃金は不満要因であっても、モチベーションを上げるにはそれほど効果がないということです。


 どういうことですか。

A
 「ぜいたく」は翌日から「日常」になると言われているように、いくら賃金を上げてもすぐに慣れてしまい、従業員のやる気は長続きしないということです。ただ、その従業員にとって明らかに能力の低い人と自分の給料が同じだったりすると不満は広がります。


 それではどうやって賃金を決めていけばいいのでしょうか。

A
 大企業と中小企業では賃金の決め方は違います。一番の違いは、中小企業においては一人一人の顔と名前が社長にわかるということです。大企業では賃金テーブルを作り、成果主義を基本にした賃金制度も必要でしょう。しかし、中小企業においては一人一人家庭の事情や能力を勘案して「鉛筆をナメナメ」決めていけばいいと思います。これが意外と実情に合っているのです。


 そんなことでいいのですか。成果主義賃金が時代の流れで年功賃金はなくなっていくのではないのですか。

A
 確かに、例えばタクシー会社では年功賃金は無理でしょう。しかし、最近よくマスコミ等でも紹介される超優良企業の「樹研工業」「未来工業」は年功賃金です。


 仕事を一生懸命やってもやらなくても賃金が同じということでは、やる気は出てこないのではないのですか。

A
 そのような面もあるかもしれません。しかし、「人は賃金のみで働くというものではない」というのも真実です。だいたい、経営的に苦しいのにお金でやる気を引き出そうというのが無理な話です。


 それでは、賃金を決める上で何が大切でしょうか。

A
 経営者がどんな従業員になってもらいたいかというメッセージをはっきりと伝え、それなりの人事評価をし、本人に返していく努力をすべきだと思います。本人に評価の結果を知らせないからいい加減な評価になり、従業員の成長にも役立たないものになってしまうのだと思います。

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