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年金事務所の調査とは

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

年金事務所の調査とは
【2011年9月】


 年金事務所から調査すると言ってきました。何のための調査でしょうか。

A
 社会保険に加入すべき人がすべて加入しているかどうか、社会保険料の算出根拠となる給料が正しく報告されているかどうかを調査します。


 社会保険に加入すべき人がすべて加入しているかどうかはどのようにして調べていくのですか。

A
 私が立ち会った調査の多くは、まず所得税源泉税領収書に記載されている人数と社会保険に加入している人数を比較し、差がある場合は該当者が本当に社会保険に加入しなくてもいい人かどうかをチェックします。


 パートでも加入するのですか。

A
 はい。労働時間にして通常の労働者のおおむね4分の3以上働く人はパートであろうが臨時社員であろうが加入しなければなりません。私は「1日6時間以上働いて1カ月に17日以上出勤する人」は社会保険に加入させるよう勧めています。


 それなら8時間働いて1カ月に16日なら社会保険に加入させなくていいのでしょうか。

A
 年金事務所は「おおむね」4分の3と言っていますから加入しなくていいと断言はできません。


 加入すべき人を加入させていないとどうなりますか。

A
 最高2年間さかのぼって加入させられ保険料を徴収されます。保険料は今や給料の約25%と大変な額になります。日本最大のレジャーランドでアルバイト1600人の社会保険加入漏れが見つかり保険料数億円支払った事例があります。


 高齢の人で、これまで年金に加入しておらず年金をもらえる見込みがないので社会保険に加入したくない、という人もいます。

A
 社会保険は加入したい人だけ加入するというわけにはいきません。例えば医療保険の場合給料100万円に基づく保険料の人も給料10万円に基づく保険料の人も医療の中身は同じです。また病気になりやすく治りにくい高齢者もほとんど病気にならない若者も給料が同じなら保険料は同じです。これは民間の保険では考えられないことです。だから社会保険は強制でなければならないのです。


 それにしては社会保険に加入していない事業所が多いですね。社会保険に加入していない場合の罰則はないのですか。

A
 あるのですが罰せられた会社はほとんどありません。


 当院のように社会保険に加入しているところはパートが加入しているかどうか厳しく調査し、社会保険に加入していない事業所には何のお咎めがないというのはおかしいですね。

A
 全国で事業所は500万以上あるといわれているのに社会保険に加入しでいるのは170万程度です。支払い能力のある大企業の保険料を増やし中小企業の保険料を下げ、すべての中小企業が社会保険に加入できるようにすべきです。


 私も『月刊保団連』7月号を読んで、東日本大震災復興や社会保障の充実という大義名分で消費税増税がまるで当然のように報じるマスコミに警鐘を鳴らす記事や、税は応能負担が原則という記事を読み、税金・社会保険料の応能負担を実現することが大切だと思いました。

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