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採用間もない看護師の妊娠が判明。解雇できるか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

採用間もない看護師の妊娠が判明。解雇できるか
【2011年7月】


 採用したばかりの看護師が5日くらいして妊娠していることが判明しました。何年か勤めてから妊娠出産なら分かりますが、採用したばかりで妊娠したことが分かったわけですから解雇あるいは退職してもらうことはできませんか。

A
 男女雇用機会均等法で禁止しているので無理です。


 妊娠しただけで解雇はできないのですか。解雇制限があるのは産前産後だけではないのですか。

A
 労働基準法では女性が産前6週間に休業を請求した場合や就業が禁止されている産後8週間、その後30日は解雇できないことになっています。これは罰則付きで禁止されています。


 男女雇用機会均等法では罰則はないのですか。

A
 罰則はないものの都道府県にある雇用機会均等室の助言指導勧告があります。


 指導勧告に従わない場合どうなりますか。

A
 厚生労働大臣から公表されることになります。それはそうと、その看護師さんは今後どうしたいといっているのですか。


 産休を取るまで働き、その後育児休業を取り、引き続き勤務したいといっています。

A
 それであれば働いていただいたらいかがでしょうか。なかなか看護師さんの応募がないのが現実ですから。


 そんなこといっても病院経営は大変です。

A
 おっしゃっていることは分かりますが、女性が安心して長期に勤めていただける職場を作ったほうが長期的には経営は安定すると思います。看護師さんは高度な専門知識と技能が必要です。当然一人前になるには時間がかかります。私は看護師さんに支払う給料は経費ではなく投資と思っています。2~3年で退職されたら幹部がその職員の教育のために費やした時間やその間の賃金が無駄になってしまいます。


 しかし、まだ試用期間中です。もし仮に能力がないことがはっきりした場合も解雇できないのですか。私のところは人工透析をやっているのであまり能力のない人は無理です。

A
 解雇が妊娠によるものでない場合は男女雇用機会均等法に違反しません。しかし、試用期間中とはいえ「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(労働契約法16条)となっていますから解雇は簡単に考えないことです。


 試用期間中はいつでも解雇できるというものではないのですか。

A
 本採用後の解雇と比べればハードルは低いものの、試用期間中の解雇もそれなりの合理性が求められます。


 一度採用してしまうと解雇は大変ですね。

A
 そうです。したがって解雇は慎重におこなうことです。事業主から退職するよう働きかけることはできます。私は、どうしても辞めてもらいたいときはなるべく退職届を出してもらうよう勧めています。試用期間中であればなるべく早く判断し、もしも適格性に欠けるようでしたらよく話し合い、この職場には向かない旨を理解してもらうことが大切と思います。それに解雇を争う裁判になった場合、能力がないということを証明することは大変です。

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