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従業員の交通事故への経営者の対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

従業員の交通事故への経営者の対応
【2010年11月】


 いつもはバスと電車を使っている職員が、終業後そのままドライブに行くためマイカーで出勤し、途中、赤信号で停車中のダンプカーに追突し大怪我をしました。過失は100%当方の従業員にあるということで相手の保険は使えません。私はこれまでマイカー通勤を認めていませんでした。このような時、通勤災害として労災保険は使えるのでしょうか。

A
 例え、マイカー通勤を事業主が禁止していても経路や通勤時刻が合理的なものであれば通勤災害となり労災保険は使えます。したがって治療費も休業給付も労災保険から支給されます。


 従業員が加害者になった場合、経営者に責任はあるのでしょうか。

A
 裁判でも難しい問題になっています。一般的に通勤・業務を含めマイカーを一切禁止し、実際にも遵守している場合は経営者責任がありません。しかし、ガソリン代、駐車場代、車検の費用を経営者が負担するなどしてマイカー通勤を奨励していると見られると経営者にも責任があるとされる可能性が出てきます。法的な根拠は民法の使用者責任と自賠法の運行供用者責任です。簡単に言うと運行を支配し、運行によって利益のある者は賠償責任がある。たとえば業務で患者さんを訪ねるときマイカーを使ったりしていると、経営者も損害賠償責任があるとされます。


 通勤には公共交通機関を使うようには言っていますが、マイカーで出勤してしまうときは診療所の駐車場を無料で使わせています。これはマイカー通勤を奨励しているということになりますか。

A
 一般的にはそうはならないと思いますが、最近は事業主の責任を広く認める傾向にあります。もしマイカー通勤をさせるのでしたら無条件に自動車保険は対物・対人賠償は無制限に加入させ、加入した者のみにマイカー通勤を認めるべきです。あるホテルではそうしたマイカーにはステッカーを貼り、それ以外の自動車でのマイカー通勤は認めないことにしています。


 子どもを保育園に今度通わせる職員からもマイカー通勤の要望が来ていますが、認めないほうがいいですね。

A
 そうもいかないと思いますので、マイカー通勤を認めるにしてもマイカー通勤規程をしっかり作り保険の加入、事故のときの対応など常に徹底させておくことが必要です。


 職員が昼休みに私用で診療所の自動車を使い事故など起こした場合も診療所に責任が発生しますか。

A
 そうです。自動車に鍵をつけたままにして盗難にあい、その車が事故を起こせば持ち主の責任となることもあります。したがって、車両管理規程・自動車事故取り扱い規程等を作成し自動車の管理や事故が起きた場合の対応、たとえば、①けが人の救助(119番への連絡)、②2次災害防止のため車を安全なところへの移動、③相手方の確認、④警察(110番)への連絡、⑤目撃者の確認、⑥事故状況の把握、⑦保険会社への連絡、⑧現場で示談や約束をしない、など徹底しておくことも大切です。

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