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育児休業法改正の対応は

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

育児休業法改正の対応は
【2010年9月】


 10カ月で育児休業を終了してきた職員が「30分遅く来て30分早く帰ります」と言ってきました。育児休業法が改正されたのですか。

A
 育児・介護休業法は改正されましたが、それは「育児時間」として昔から労働基準法に定められています。生後1年未満の乳幼児を育てる女性は労働基準法に定められた休憩時間のほか1日2回それぞれ30分の育児時間を取れるようになっています。


 昔といってもどのくらい昔ですか。

A
 労働基準法ができたときからですから、60年以上昔となります。そればかりか、戦前の工場法でも同様のことが定められていました。


 でも初めてのことなので驚きました。

A
 育児の時間を取ることは大切なことなのですし、半世紀以上前からできている制度なのでかなり普及していい制度ですが、この制度を知らない経営者がいるということは残念なことです。
  本来育児休業は1年間取れるのですが、時期を逃すと保育所には入れないので1年未満で復帰してしまうことも多いようです。働く女性が安心して子育てできるようにするとともに働く女性の能力を発揮していただくためにも、保育所不足は本当に深刻です。


 私の診療所は7時間勤務です。乳幼児が1歳になるまでは合計育児時間は仕方がないとしても、1歳過ぎてからも6時間勤務にしてほしいと言ってきました。とても忙しいのでこの要望にこたえるのは大変なのですが。

A
 6月30日から実施された改正育児休業法では「経営困難」とか「事業繁忙」などの理由ではこれらの申し出を断ることができないことになっています。ただ100人以下の労働者を雇用する事業主については2012年6月30日まで猶予措置があります。


 その100人というのは事業所ごとですか。それとも法人全体でですか。

A
 法人全体でです。


 そうすると私のところは対象となります。1年経過すると育児時間はとれません。したがって短時間勤務制度で1日6時間勤務を希望していますが、これも応えなければいけないのでしょうか。

A
 そうです。3歳までの子を養育する労働者について短時間勤務制度(1日6時間)を設けることが事業主の義務となりました。


 6時間でなければいけないのですか。

A
 1日の所定労働時間を6時間とした上で、たとえば、1日の所定労働時間を7時間としたり、所定労働日数を短縮するなどの措置をあわせて行うことも可能です。このほか労働者から請求があった場合、所定外労働の免除を制度化することも義務となりました。


 それにしても女子労働者の多い職場は業務を回していくのが大変です。

A
 そのため父親も子育てできる制度もできました。


 実際に男性が育児休業を取ったところはあるのですか。

A
 たまにニュースになるくらいですから実際の取得率は極めて少なく1.56%となっています。男性が子育てや家事に費やす時間は先進国中最低の水準です。


 日本も少しは男性も子育てに時間を費やすべきですね。

A
 イギリスでは、首相が育児休業を取るほどですから、日本も会社の経営トップの意識を変える必要があります。今回の改正で重視されているのは出産後8週間以内の父親の育児休業の取得の促進です。通常は1回育児休業を取ると2回目は取れませんでしたが、この場合2回目もとることができ生後1歳2カ月まで育児休業をとれるようになりました。いずれにしろわかりにくい制度なので各都道府県の労働局雇用均等室へ気楽に電話して確認することが大切です。制度の詳細が記されたパンフレットも厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

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