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知らないと損する年金

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

知らないと損する年金
【2010年6月】


 民放のテレビ番組で、最近売り出し中の女性経済評論家やタレントが、知らないと損する年金の話をしていました。知っておけば得することがあるのですね。特に付加年金は初めて知りました。

A
 国民年金の1号被保険者が加入できる制度で月400円支払えば(納めた月)×200円受け取れるというものです。40年納めれば年額年金が96,000円増えますが、額が少ないのが欠点です。


 国民年金は60歳から受け取ることも可能なのですね。

A
 早く年金を受け取ることを繰り上げ支給といいます。65歳まで待ちきれず繰り上げ支給をしている人が多いのですが、1カ月当たりO.5%減額されますから、60歳から受け取ると30%減額されます。これが一生続きます。


 早く死んだら損ですよね。

A
 人は誰も何歳まで生きるかということは分からないわけですからなんともいえませんが、私個人としては繰り上げ支給を勧めていません。


 それはどうしてですか。

A
 番組では触れていませんでしたが、65歳までに障害者になると、障害の重さによっては障害基礎年金を受け取れる可能性があります。繰り上げ支給でたとえ1カ月でも老齢基礎年金を受け取ると障害基礎年金は受け取れません。障害基礎年金は2級でも792,000円ですからかなり受け取る年金額が違います。


 繰り下げ支給はどうですか。

A
 1カ月当たりO.7%年金が増額されます。70歳から受け取り始めると42%増えることになります。81歳より長生きする人はお得になります。これも何歳まで生きるということは医師である先生でも分からないわけですから、なんともいえません。税金なども検討して決めるといいでしょう。


 年金保険料を前払いすると保険料が少し安くなる制度もありますね。

A
 1年前払いすると年間で3千数百円安くなります。ゆとりのある人は検討する価値があると思います。しかし、私はこのような制度より、失業や破産で保険料を支払うことが困難あるいはできない人には国民年金の保険料の免除制度があることを紹介してほしいと思いました。


 年金は知らないばかりに損することが多いのですね。

A
 そうです。私は常々、「税金はわれわれが忘れても忘れてくれません。年金はわれわれが忘れたらそれっきりです」と言っています。年金は知らないばかりに損する人がかなりいます。


 医師でも無関心な人もいます。

A
 医師・歯科医師の方は収入で比較的恵まれた方が多いので年金を当てにしない人もいます。それにマスコミも盛んに公的年金に関する不安をあおり元大蔵省の幹部で現在大学教授をしているような人までテレビで同様の意見を述べています。このような公的年金に対する不安が大量の国民年金滞納者を生み出している原因になっています。


 実際に医師・歯科医師で知らないばかりに損をしている人はいますか。

A
 はい、いらっしゃいます。昔厚生年金に加入していたのでもう少し国民年金を掛ければ老齢厚生年金も老齢基礎年金も両方受け取れるようになることが分かった人もいます。それに私は医療関係の人にはぜひ障害年金に関心を持ってもらいたいと思います。


 障害年金ですか。

A
 そうです。障害年金は肢体不自由など目に見える障害だけでなく精神・神経疾患、心臓病などの内部疾患等、重ければどんな病気でも対象になります。

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