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突然有給を取る職員の皆勤手当は

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

突然有給を取る職員の皆勤手当は
【2009年12月】


 ある職員は病気を理由に突然有給を取ります。はじめは、有給は出勤したものとして扱うのは当然と思って皆勤手当を支給していましたが、あまりにも頻繁なので、この場合皆勤手当を支給しないようにしようと思うのですが。

A
 事前に有給休暇を申請した場合はどのように扱うつもりですか。


 その場合は当然皆勤手当を支給します。ローテーションを組んでぎりぎりのところで診療所を運営しているのに、突然有給だといって休まれると診療所の正常な運営に支障をきたすので皆勤手当を不支給にしうと思うのです。先日労働基準監督署に問い合わせたところ、「有給休暇を取得したことによる不利益取り扱いになるからできない」というのです。

A
 確かに労働基準法附則第136条には使用者は「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない。」と書いてあります。


 そうすると労働基準法違反ですから罰則があるのですか。

A
 いえ、これは努力義務規定ですから罰則はありません。それに労働基準監督署で回答する人は必ずしも労働基準監督官ではなく、たとえ、労働基準監督官であってもすべてに精通しているわけではありません。また裁判になり労働基準監督署の見解が覆ることもあります。


 そのような判例があるのですか。

A
 はい、あります。先生のところの事例とまったく同じというのではありませんが、タクシー運転手が有給休暇を取ったことを理由に精皆勤手当を不支給にされたことは無効であるとして訴えた事件で最高裁判決は、皆勤手当の額が全体の給料に占める割合が1.85%と少なかったこともあったと思いますが、有給休暇を定めた労働基準法第39条の精神に沿わない面を有するとしつつも「その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては同法(有給休暇を定めた労働基準法第39条)が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序良俗に反して無効とすることはできないと解するのが相当である。」(沼津交通事件)として有給休暇取得に伴い皆勤手当を不支給ないし減額したことを有効としています。


 私のところは、有給休暇を取ることで皆勤手当を一般的に不支給としていません。その日になって突然有給にしたいといってきたときのみ皆勤手当を不支給にしているのです。それに皆勤手当も1万円でそんなに多くありません。

A
 そうです、したがって事前に届けない有給休暇について皆勤手当を不支給にしても差し支えないと思います。ただし就業規則でそのことを明確にしておく必要があると思います。


 就業規則を不利益に変更することは問題でしょうか。

A
 不利益かどうかを最終的に決めるのは裁判所ですから、今回の場合は通常の手続き通りすればいいと思います。


 それにしても、私など働きづめで有給休暇など取ったことがありません。

A
 先生は事業主で労働基準法の適用がありませんので仕方がないといえますが、オリンピックの開催が決まったブラジルでは連続30日の有給休暇が基本的に義務付けられています。例外的に分割もできるそうですが10日より少ない有給休暇は禁止されています。それに、50歳以上は30日間連続してとらなければなりません。


 私など30日も連続して休んだらどこかおかしくなっちゃうよ。それにしても日本とブラジルどちらが「豊か」なんでしょうね。

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