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粗雑な評価は職員をダメにする―自信のないことは評価するな―

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

粗雑な評価は職員をダメにする―自信のないことは評価するな―
【2009年4月】


 前月号で給料と人事評価のことが話題になっていました。私のところは評価結果を公表していませんが、やはり公表した方がいいのでしょうか。

A
 前月号でも紹介しましたが、評価は難しいですが先生のところは職員の数も増えてきましたから職員の教育のためにも目標を明確にし評価をし、当人に結果を知らせていく方がいいと思います。


 評価を給料に反映する成果主義賃金が問題になっていますが。

A
 そうです。うつ病の多発を引き起こしている成果主義賃金に関し、産業医などから指摘が多いのは評価の粗雑さがあります。


 そうすると、下手な評価ならしない方がいいということですか。

A
 私も個人的にはそう思います。公表していなかった粗雑な評価結果を偶然当の職員が知ってしまうことになり、かなり当人が傷ついたということも聞いたことがあります。


 評価をうまくやっているところはありますか。

A
 訪問診療が中心の医療機関ですが、そこは職員も明るいので結構うまくいっているものと思います。


 どのような方法ですか。

A
 まず「幹部の重要な役割の1つは職員の教育あるいは成長を援助することだ」ということを明確に位置付けています。そして評価項目の中に医院長のメッセージを盛り込む努力をしています。つまり、医院長はどのような仕事を、どのように進めてほしいのかということを明確にしています。


 具体的に言うと、どのような着眼点がありますか。

A
 例えば仕事の質に関しては①内容は複雑・困難あるいは精度の高いものであったか②正確でミスはなかったか―。仕事の量に関しては①期待した仕事の量をこなしたか②仕事の処理は短期間に行ったか―などについて、どの程度達成したかをチェックしています。


 そのような基準を作るのは大変ですね。専門家に頼んだほうがいいでしょうか。

A
 賃金関係の専門家にもいろいろな人がいます。専門家なりコンサルタントに頼むと多くの場合、必要以上に複雑で、しかも料金は先生がびっくりするほど高額なものになっています。職員30人程度のある事業所で、400万円かけて賃金体系・評価システムを作成してもらいましたが、全く役に立っていません。素人ではとても運用できないのです。


 私たちで作ったもので大丈夫ですか。

A
 最初は単純なものでいいと思います。作成の仕方にはいろいろなものがありますが、基準は簡単なものをまず公開し、先生の思いを伝えることです。


 それに基づき幹部が評価するのですか。

A
 いえ、まず自己評価をしてもらうことが大切です。自己評価することで、医院長がどのようなことを重視しているかが当人に分かると思います。


 でも必要以上に自分を高く評価する人と低く評価する人がいます。その場合どうするのでしょうか。

A
 確かに、以前この欄でも紹介しましたが石川啄木も「人並みの才に過ぎざるわが友の深き不平も哀れなるかな」「誰が見てもとりどころなき男来て威張りて帰りぬ悲しくもあるか」と嘆いています。白分のことはなかなかわかりません。先生の評価と当人の認識の差異こそ、話し合うことが大切です。


 とりあえずやってみましょう。

A
 それと評価結果を本人に知らせるわけですから、幹部の方には自分の自信の持てるところだけ評価するように徹底し、よくわからないことは公表しないことです。

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