奈良県保険医協会

メニュー

給料の決め方

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

給料の決め方
【2009年3月】


 私のところの職員の給料はよそと比べてどうですか。

A
 30歳の看護師で月額給料はどのくらいですか。


 残業30時間くらいで33万円くらいです。

A
 先生のところは地方ですし、月刊保団連臨時増刊号『特集経営対策シリーズ2007』に掲載されている全国病院経営管理学会調査を見ても、そんなに遜色はないと思います。


 しかし、15年以上勤務している人で、これからは、そんなに能力の向上も期待できない人がいます。毎年今までの調子で給料を引き上げていくのは大変です。給料の上げ幅をだんだん少なくしていくことは問題ありませんか。

A
 先生のところは給料のテーブルのようなものがありますか。


 いえ、ありません。毎年各人ごとに決定しています。これまで、人により3,000円から5,000円基本給を上げてきました。

A
 給料の引き上げ幅は人事評価で決めているのですか。


 そうです。よくやってくれる人にはそれに報いようとしています。ただ最近悩んでいるのが評価の基準です。責任感が強いとか、あれこれ指示しなくても仕事ができるとかで決めていますが、最近勤めるようになった中途採用の看護師から「評価の基準」を聞かれて言葉に詰まってしまいました。よその診療所では評価の基準はどうしているのでしょう。

A
 評価では「成果」「能力」「情意」に分けて個々に面接して決めるといわれていますが、私の関係しているところでは明確な基準がないところがほとんどです。労働基準法では賃金とは「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を間わず、労働の対象として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義されています。しかし、職務分析がまったく行われない日本では、労働の対象つまり「仕事」に支払うよりも「人」に対して支払われます。しかも「責任感」とか「規律性」とか、評価する人の主観が大いに入る基準で評価するので不満がどうしてもくすぶります。先生のところでは評価の結果を職員には知らせていますか。


 いえ、知らせていません。低く評価された職員がやる気をなくしてしまうかもしれないし、私自身人を評価することに自信がありません。ほかでは評価の結果を知らせているのですか。

A
 ほとんどの事業所では知らせていません。明治大学の遠藤公嗣教授によれば、日本では「人事考課表」の写しを本人に示している企業はたった2.1%です。これは世界の常識、少なくとも先進国の常識とはかなり違います。アメリカでは本人に人事考課の結果を見せて「確かに見ました」というサインをもらっておかないと「雇用差別禁止法」の適用を受け「女性だから差別され低い賃金にされた」などと訴えられ懲罰的な損害賠償を支払わなければならないことになります。ヨーロッパでも人事評価に納得できなければ、労働組合などに訴えられるとのことです。従って人事評価の結果を「見た」あるいは「同意した」とどちらかにサインするのが一般的だそうです。


 評価の結果を知らせるべきですかね。

A
 職員の成長のためにも、きちんと評価し目標を明確にし「その日暮らし的な仕事」にならないよう援助することは大切です。しかし、いい加減な評価をすれば、その人の職業人生を狂わせてしまう恐れもあります。


 それでは評価をしないほうがいいのでしょうか。

A
 日本人は低く評価されたことに対し「そんな評価は不当だ。私はこんなに優れている」などという人はあまりいません。従って評価を公表するかどうか、慎重にせざるを得ません。給料の決め方は相場を参考にするのが最も妥当です。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示