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育児休業は与えなければならないか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

育児休業は与えなければならないか
【2008年11月】

Q
 出産予定の女子職員が、出産後は育児休業を取りたいといってきました。大企業ならともかく、うちのような従業員10人以内の職場でも育児休業を与えなければいけないのでしょうか。

A
 はい、与えなければなりません。また、事業所の規模にかかわらず、育児休業を申し出たことによる従業員の「解雇その他不利益な取り扱い」は禁止されています。

Q
 昔、私が勤めていた病院は出産したら退職してもらっていましたが、そういうことはできなくなったのですか。

A
 先生、それはかなり昔の話です。今はできません。

Q
 残された人だけで体制が組めればいいのですが、そうでないときは臨時に雇わなければなりません。それならいっそうのこと退職してもらって、子育てが一段落した時に、もしもこちらにゆとりがあれば再就職してもらったほうが都合がいいのですが。

A
 それは経営者の考えです。医療機関においては有能な女性に能力を発揮してもらうことが重要です。最近就職活動をしている女子学生がまず聞くことは、子どもが生まれても引き続き働くことができるかどうか、育児休業の実績があるかどうか、研修制度はどうなっているかです。優秀な職員に定着してもらうためにも、育児休業が気楽に取れるということは重要なポイントです。

Q
 それに1歳を過ぎても子どもが病気といえばすぐに休みますし、こちらとしては当てにできなくなります。

A
 それでも優秀な職員に定着してもらうメリットは大きいです。それに他の職員も子育てしながら働いている職員を先生がどう扱うか見ています。

Q
 なるほど。でも困ったな。

A
 せっかく育児休業を取る人が出たのですから「中小企業子育て支援助成金」を申請したらいかがでしょうか。

Q
 なんですかその助成金は。

A
 育児・介護雇用安定助成金ともいいます。2006年4月以降、初めて育児休業を取得した人が出た場合に支給されます。1人目は100万円、また別な人が育児休業を取れば60万円支給されるというものです。

Q
 手続きが面倒なのではありませんか。

A
 いえ、一定の要件がそろっていればそんなことはありません。窓口は財団法人21世紀職業財団です。最近は、かなり親切に対応してくれるようになりました。助成金を申請する際大切なことは、窓口によく確認し、窓口の担当者を味方にすることです。それと期限を守ることです。

Q
 どんな書類が必要ですか。

A
 就業規則などですが、必要な書類一覧表を21世紀職業財団に頼めば送ってくれます。このほか、短時間勤務制度を実施したときも助成金があります。

Q
 パートの人も受けられますか。

A
 雇用保険の被保険者であれば受けられます。

Q
 それにしても、男は子どもが病気でも会社を休むわけにはいかないのですかねえ。いつもわれわれがしわ寄せを受けます。

A
 確かに、今の日本では子どもが病気になっても父親が会社を休むことはあまりありません。育児は女性がするものという風潮が根強くあるためです。また大企業の経営者が「家庭と仕事の両立支援」とか「ワークライフバランス」とかいっても、実態は長時間労働が定着しています。大企業の労働者は内部告発をしませんが実態はすさまじいものです。私の知人など、事業所の始業は8時45分なのに7時30分には出勤しています。帰宅も午後10時、11時はざらです。大企業の顧問弁護士から大企業の職場は「皆さんが思っているよりはるかに深刻です」と言われ驚いたことがあります。私は、大企業の思い切った時間短縮と正社員雇用の拡大こそ真の「ワークライフバランス」実現の切り札と思っています。

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