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有給休暇を見直そう

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

有給休暇を見直そう
【2007年12月】


 子どもを病院に連れて行くので2時間有給休暇を取りたいと言ってきた職員がいましたが、時間単位で有給は取れますか。

A
 現在のところ時間単位の有給休暇は取れません。


 私が勤めていた国立病院では時間単位の有給休暇を取っていましたが。

A
 公務員はそのような制度がありますが、民間はありません。民間では半日単位の有給休暇は認められています。しかし、ホワイトカラーエグゼンプションなどとともに、時間単位の有給休暇も検討されています。


 どのようになる可能性がありますか。

A
 労使の協定がある事業所に限定して、5日以内に限って時間単位で有給休暇を与えることができるように検討しています。


 どうしてそのようなことが検討され始めたのですか。

A
 長時間労働者がまだまだ多く見られますから、長時間労働を抑制し、健康を確保できる労働時間制度の整備が必要となってきたためです。


 小さな診療所では、法律どおりに有給休暇を与えることは無理なのではないでしょうか。

A
 確かにそのような状況はあります。日本の労働者全体では有給休暇の取得率が50%いかないわけですから。


 そうでしょ。私の周りの医院でもなかなか有給休暇を与えられないでいるようです。

A
 確かに今の日本では、有給休暇もとれずに働いている実態があります。しかし、最近よく開かれる言葉に「ワークライフバランス」があります。つまり仕事と生活のバランスを実現するために「働き方の見直し」が議論されています。


 ワークライフバランスといいますけど「はたらけど、はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり、ぢっと手を見る」(石川啄木)という、仕事に追われている状況が続いていますね。

A
 実態はそうですが、労働基準監督署の担当者は「有給休暇などで労働時間短縮をすることこそ、景気回復のコロンブスのたまごだ」と言っていました。


 どういうことですか。

A
 大企業を中心に景気回復したといっても、この景気拡大は輸出によるものです。一番大切な個人消費を刺激するには、有給休暇をきちんと取り、旅行したりレクリエーションに時間を割くことだ、という試算もあります。


 なかなかそう理屈どおりにはいきませんね。私など3日も連続して休暇を取ったことなどありません。

A
 最近、連続休暇の重要性について強調する経営者も出ています。


 どういうことですか。

A
 成果主義の下で、先輩が後輩に仕事を教えなくなりました。そうした先輩に、強制的に後輩に仕事を教える仕組みが長期の連続した休暇だというのです。つまり長期の休暇をとるためには、自分の仕事をキチンと引き継がなければなりません。そのためには仕事を教えなければなりません。


 長期といっても、どのくらいですか。

A
 最低でも9日間です。その間は携帯電話はおろかメールも禁止しています。この間は先輩の方が辛いそうです。


 そうすると、残された人たちが上のものを頼らないで、自分で考えなければならないというわけですね。

A
 そうです。そうすれば長期休暇を取ったものは、家族旅行もでき家族円満ということです。家庭が円満なら仕事の事故も起こりにくいというわけです。


 家族に不満ばかり言われたら、いい仕事はできませんからね。

A
 そうです。先ほどの石川啄木も「ありあまる才を抱きて、妻のため、おもいわづらふ友をかなしむ」と歌っています。

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