失業給付は退職理由によって条件が違う
雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩
「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
失業給付は退職理由によって条件が違う
【2007年10月】
Q
職安から連絡があって、うちの診療所を退職した職員が、退職理由が違っていると言っていますが、こういう場合どう対処すればいいのでしょうか。
A
何と言っているのでしょうか。
Q
退職理由が「自発的な転職のためとなっているが実際は辞めさせられた」と言っているというのです。
A
実際はどうだったのですか。
Q
私も長年我慢してきましたが、あまりにもミスが多かったので、「うちには向かないからほかへ行ったら」と言ったら、「それなら辞めます」と言ったのです。
A
それで辞めたのですか。
Q
はじめはビックリしていましたが、「今後大きなミスをしたら取り返しのつかないことになる。明るいけどそそっかしい人は別な分野のほうが能力を発揮できる」と言ってやったら納得してくれました。
A
失業給付を受けるための書類「離職票」(雇用保険被保険者離職票)には本人のサインをもらったのですか。
Q
いえ、もらっていません。
A
事業主の言う離職理由に異議があるかないかを聞くところが離職票にありますが、そこにサインをもらっていないと、このようなトラブルが起きます。
Q
だけど、本人が「辞めます」と言ったのですよ。
A
しかし、本人は辞めさせられたと思っているのです。
Q
なんで、こんなに辞めた理由にこだわるのでしょうか。
A
雇用保険の失業給付は、自分の都合で退職した場合は3カ月間の支給制限があります。事業主の都合の場合は、1週間の待機だけで失業給付を受けることができます。しかも受給期間が違います。
Q
どのくらい違うのでしょうか。
A
その方は何歳でどのくらい勤めた方ですか。
Q
45歳で2年勤めました。
A
すると、自分の都合で退職した場合は90日ですが、事業主の都合で退職した場合は180日になります。
Q
ずいぶん違いますね。
A
そうです。その方もはじめは知らなかったのでしょうが、職安で説明を受けて初めて知ったのでしょう。だからやめた理由にこだわるのです。
Q
しかし、本人が辞めるといったのです。
A
先生のおっしゃっていることも分かりますが、私から言わせれば「勧奨による退職」です。
Q
なんです、その「勧奨による退職」というのは。
A
簡単に言えば「あなたは引き続き勤めてもいいですが、できたら辞めてくれますか」と言ったところ、それに応じたというものです。
Q
そうすると、事業主の都合になるのですか。
A
そうです。
Q
事業主都合の退職があると、何か私の診療所に不利になることはありますか。
A
前後半年間、高年齢者や障害者、母子家庭の母を雇用すると受けられる「特定求職者雇用開発助成金」が受けられなくなります。
Q
それならたいした問題ではありません。
A
それでも先生、素直に退職してくれてよかったですよ。私の関与している会社で、社長の友人の娘さんを入社試験の合格点に遠く及ばないのに無理して雇用しました。トラブルばかり起こすので退職勧奨しましたが、応じないので解雇したところ、弁護士を通じて「解雇無効だ」と言ってきて大混乱しています。
Q
こうしたトラブルを防ぐには、どうしたらいいですか。
A
「退職届」をもらうことです。ともかく労働契約も契約です。この契約は結ぶことより解約は10倍エネルギーが必要です。
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- 2007年9月1日医療機関も例外でない労働基準監督署の調査
- 2007年8月1日宙に浮いた年金・消えた年金の対策は… 意外に多い医師の無年金者
- 2007年7月1日個人診療所の厚生年金加入手続きは
- 2007年6月1日新人職員がいつかない。いじめが原因か
- 2007年5月1日ドクターも雇用保険に入れるのか
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