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ドクターも雇用保険に入れるのか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

ドクターも雇用保険に入れるのか
【2007年5月】


 職業安定所から、ドクターも雇用保険に加入させるよう指摘がありました。医師も雇用保険に加入させなければならないのでしょうか。


 その方は法人の理事など役員になっていますか。


 理事ではありません。勤務医です。


 すると労働者ですから雇用保険に加入しなければならないことになります。


 医師の場合たとえ退職しても失業給付を受ける人はまずいないと思います。それでも雇用保険に加入しなければならないのですか。


 雇用保険の失業給付は「失業」という保険事故に遭ったときに給付されるものです。しかも強制加入の保険です。たとえその人が失業給付をまったく受け取る意思がなくても加入しなければなりません。失業給付を受け取らなくても、求職の申し込みをしていれば再就職手当金が受け取れる場合があります。職安の紹介で再就職するとこの手当金はすぐに再就職しても受け取れます。


 だいたい、医師の求人を職安に出すところがありますか。職安紹介で医師を雇用した話など聞いたことがありません。


 いえ、ちゃんとあります。インターネットで「求人」と検索すると「ハローワークインターネット」が出ます。それで検索すると医師の求人情報を見ることができます。医師の賃金の相場なども分かります。


 話はそれますが、インターネットで医師の求人ができるのですか。


 そうです。これからはインターネットの求人を検討されるといいと思います。若い人はインターネットで求職先を探しています。それには先生のところのホームページの充実も大切になってきます。


 雇用保険の話に戻りますが、たとえば、私の娘が今度医師として私の診療所に勤務した場合、雇用保険に加入することになりますか。


 同居の場合は通常雇用保険の被保険者にはなりません。ただし、①事業主の指示に従って通常の労働者と同じように働いている。②事業主と利益を一にする地位にないこと、などの場合は雇用保険に加入することになります。


 そうすると、娘がマンションでも借りて私の家を出て行くと雇用保険に加入することになりますか。


 原則は雇用保険に加入することになります。


 将来医療法人の理事にする計画ですが、それでも雇用保険に加入させなければなりませんか。


 理事になるまでは、原則雇用保険に加入しなければなりません。しかし、職安によってはさまざまな見解がありますから地元の職安に確認してください。


 雇用保険に加入すべき医師を雇用保険に加入させるとなると、いつから加入させることになりますか。


 通常は、雇用関係が生じたときからですが時効の関係で最高2年までさかのぼって加入することになります。


 雇用保険料が安いといっても医師の給料は高いからかなりの額になります。何とかならないのでしょうか。


 私の顧客も最近2年間さかのぼって保険料を徴収されたことがありました。


 私の知っている医師の診療所では、労災保険も雇用保険も加入していません。こうしたところがあるのに、雇用保険に加入しているところはこんなに厳しく保険料を取り立てるのはおかしいのではないでしょうか。


 先生のおっしゃっていることは分かりますが、雇用保険に加入することは労働者の利益になりますから税金のように取られっぱなしということではありません。それにしても、これは私の推定ですが、半数近い本来雇用保険に加入すべき事業所が雇用保険に加入していないということは異常です。

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