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労災保険未加入のペナルティー強化

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

労災保険未加入のペナルティー強化
【2006年6月】


「労災保険未加入ペナルティー!」「労災保険の全額徴収」というポスターがありましたがどういうことですか。

A
これまでは、労災保険に加入していない事業所で労災事故がおきたとき、遡って労災保険に加入し、労災給付が未加入事業所の大した負担なしに行われていました。


労災保険に加入していなくても労災保険から給付があったのですか。それなら労災事故もないのに正直に労災保険料を支払っているところが損しているみたいではないですか。

A
今回、公平を期するために、労災保険の未加入事業所でおきた労災事故で休業補償・障害補償などにかかった費用を、事業主から徴収しようということになったのです。


労災保険は強制でしょう。それで加入していないところがあるのですか。

A
残念ながらかなりあります。厚生労働省は未手続き事業所は約54万件と推定しています。


医療機関で労災保険に加入していないところはありますか。

A
残念ながら医療機関で労災保険に加入していないところもあります。


強制加入なのに厚生労働省は強制的に加入させないのですか。

A
厚生労働省は権力でもって加入させるのではなく、納得をしてもらって加入してもらおうとしています。


納得を通じてとはどういうことですか。

A
例えば私たち社会保険労務士や労働保険事務組合が労働基準監督署や職業安定所から未加入事業所の名簿をもらい、行政協力として労働保険について説明に行ったりすることです。


それで加入する人もいますか。

A
残念ながら私たちが行っても全く相手にしない事業主もいます。相手にしないどころか、受付で帰され事業主と会うこともできないこともあります。民間の保険と同列に見て「また保険でも勧めに来たのか」といった態度で接する事業主もいます。無理解な事業主が警察通報し、労働保険について説明に行った社会保険労務士が警察逮捕されたこともあります。


あなた方社会保険労務士が説明にいっても労災保険に加入しない事業主はそのままですか。

A
それが今回勧奨に行っても加入しない事業主を「故意又は重大な過失により手続きを行わないもの」と認定し、保険給付額の今までは40%でしたが今回から100%徴収することになりました。


それではこのような加入についての指導を受けていない事業所はペナルティーはないのですか。

A
いえ、今回から事業開始の日から1年経過して、なお加入手続きを行わない期間に労災事故が発生した場合は重大な過失により手続きを行わないものと認定し、保険給付額の40%を徴収することになりました。ただ、保険給付額の全部ではなく、療養開始後3年間に支給されたものにかぎり療養補償給付、介護補償給付も除かれます。


実際に労災保険に加入していない事業所で労災事故が起きた場合どのように処理されていますか。

A
労災保険に加入すべきなのに労災保険に加入していない事業所は中小企業が多く、社会保険にも加入していませんから、被災労働者は国民健康保険で治療して休業補償は泣き寝入りすることもあります。それに労災保険に加入していない事業所でも労災保険から給付が受けられるということをほとんどの労働者は知りません。


先ほど医療機関でも労災保険に加入していないところがあるということでしたが、医療機関は全ての事業所が労災保険には加入してもらいたいものですね。

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