奈良県保険医協会

メニュー

“JR西日本事故” 労災保険の扱いはどうなる

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

“JR西日本事故” 労災保険の扱いはどうなる
【2005年7月】


JR西日本脱線事故労災の手続きを簡略化するという新聞記事が出ていましたけれど、スピード違反をした運転手は労災保険はどうなりますか。


労災保険法には、「労働者が、故意に負傷、疾病、障害もしくは死亡またはその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は保険給付を行わない。」としています。また、「重大な過失により」「負傷、疾病、障害、もしくは死亡」「となった事故を生じさせた」時は、「政府は保険給付の全部または一部を行わないことが出来る。」となっていますから、故意で無いので給付はあると思いますが、給付制限はあるのではないかという人もいます。私は制限なしに労災給付がされると思います。


スピード違反はかなりの過失ではないでしょうか。


確かにそうですが本人が好き好んでスピード違反をしたわけでありませんから。これとは別な事例ですが、最近私が扱った事例で警報機がなっているとき踏み切りに突っ込んだ事件で、通勤災害が認定された事例がありました。


労災手続きを簡略化するといっていますが、通常はそんなに面倒なのですか。


乗客にとっては、仕事が原因とはいえ第三者による行為ですから、通常の書類(療養補償給付、休業補償給付請求書、遺族補償給付等に関する書類、労働基準監督署によって賃金台帳、出勤簿、労働者名簿など)のほかに「第三者災害届」とか交通事故証明を提出します。また過失割合なども申告しなければなりません。


その他、大変なことではどのようなことがありますか。


事故が朝ですから通勤に該当する人もいます。また仕事で移動中の人もいます。このとき労災保険法に定義する通勤に該当するかどうか、業務に起因する災害かどうかを詳しく調査することがあります。


労災保険から給付がされると、JRからは何も給付は無いのでしょうか。


労災保険は、給付した分についてはJRに求償すると思います。そのほかにも被災労働者はJR西日本に対して民法上の損害賠償ができます。


通勤災害といえば前回、「昼休み自宅に帰る途中の事故は通勤災害にならない」とありました。しかし、「通勤は1日について1回のみしか認められないものではないので、昼休み等就業の時間の間に相当の間隔があって帰宅するような場合には、昼休みについていえば、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤するものと考えられるので、その往復行為は就業との関連を認められる」という通達もあるように、昼休みだからといって通勤災害が認められないというのは間違いではありませんか。


確かに昼休みの通勤が通勤災害とならないというのは誤りです。この場を借りて訂正させていただきます。私の想定した事例は、昼休み会社の近くに来た妻子を自宅まで送る途中の事故でした。この場合は「仕事を終えて自宅に帰るという退勤行為と捉えることは社会通念上から判断して困難であることから、通勤災害とは認められ」ない、とされたものでした。

▼労災指定医療機関になるには


ところでうちの診療所はまだ労災指定になっていません。開業して5年経たないと労災指定の医療機関になれないのでしょうか。


ちょっと誤解があります。開業して5年ではなく臨床経験が5年です。先生はもう5年以上の臨床医経験がありますから今すぐ労災指定医療機関になれます。


手続きはどうするのでしょうか。


都道府県の労働局で申請書をもらい、必要な書類とともに申請すれば良いです。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示