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昼休み自宅に帰る途中の事故は通勤災害にならない

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

昼休み自宅に帰る途中の事故は通勤災害にならない
【2005年6月】


新聞で単身赴任者が赴任先の社宅に帰る途中の事故が通勤災害になったことが、ニュースになっていました。私から見れば通勤災害と見るのが当たり前のようですが、こんなことが論争になるのですか。


そうです、われわれの常識と違うところもあります。通勤災害は、労働者災害補償保険法で定義されています。つまり「通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法により往復すること」となっています。


私の診療所は昼休みが2時間あるのでその間、自宅に帰って用事を済ませてくる職員がいますが、昼休み自宅に行く途中の事故などは通勤災害になりますか。


この場合は、通勤災害とは認められません。つまり仕事を終えて帰る退勤とは認められないということです。


自宅に行って帰ってくるのですから通勤に見えますが、そういうものですかね。私のところでは通勤方法を届けさせています。通常は電車とバスでくるものが、仕事を終えた後そのままドライブに行きたいというのでマイカーでくることがあります。このような時、マイカーで出勤途中の事故などはどうですか。


通常は電車とバスでくる職員が、たまたまマイカーできてもそれがとんでもない遠回りなどでなく合理的な経路であれば問題ありません。ただ、帰りにそのままどこかに遊びに行ってしまった場合は、逸脱中断になりその後は通勤災害にはなりません。


スーパーで買い物をするために店に寄り、買い物を終えたその後は通勤になりませんか。


「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむをえない事由によりおこなうため最小限のもの」つまり、スーパーで買い物をした場合、買い物中の事故は通勤災害になりませんが、通常の経路に戻ればその後の事故は通勤によるものとなります。


独身の看護師がスーパーで買い物し、元の経路に戻った後なら、もしも事故に遭っても通勤災害となるということですね。


そうです。ただし友達と居酒屋で長時間飲むなどすると認められないケースもあります。


私の診療所はビルの中にあり防音もしっかりしており、どんな大きな音を出しても問題がないので仕事の後、有志でバンド演奏の練習をします。練習後帰るときはどうですか。


この場合問題となるのは、練習して診療所を離れるまでの時間が「社会通念上、就業と帰宅との直接的関連を失わせるほど長時間」かどうかです。過去に2時間5分はそんなに長い時間でないとして通勤災害が認められましたが、2時間50分は長すぎるとして認められませんでした。


45分の違いがそんなに大きな違いになるのですか。何か根拠があるのですか。


明確な根拠はないと思います。2時間程度が一応の目安でしょう。


私の診療所は近くのレストランでたまに慰労会をおこないます。全員出席するように言っていますので欠席する人はいません。この慰労会の後の事故などは通勤災害になりますか。


教科書的には、業務の性格を有するものであれば認められるとされていますが、まず認められないでしょう。酒を飲む行為については労災給付がなされない方向になっているような気がします。以前は飲酒運転でも正常な運転ができないほどでないとして、労災から給付がありましたが、最近は厳しくなりました。


 通勤災害かどうかの基準は変わるのですか。


時代とともに変わるようです。サリン事件なども昔の基準では労災給付はなかったという労働基準監督署の職員もいます。

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