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有給休暇の与え方、有給休暇中の賃金

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

有給休暇の与え方、有給休暇中の賃金
【2005年5月】


前回で有給休暇中の賃金についてお尋ねした際に(1)平均賃金か、(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、と聞きました。平均賃金のほうが額が少ないので平均賃金に切り替えることができますか。


確かに月給制のときはいつもの賃金を休日分を差し引くことなく支払い、平均賃金は3カ月分の賃金を暦日で除して算出しますから、平均賃金のほうが少なくなります。


どのくらい違いますか。


例えば月給が22万円でその月の所定労働日数が22日だとすると、通常の賃金は1日1万円です。平均賃金だと3カ月の暦日日数が92日のときは約7173円です。


平均賃金で支払ったほうがはるかに安くて済みますから、平均賃金を支払うように変えたいのですができますか。


違法ではないのでそのようにできますが、就業規則の不利益変更だといって訴えられると勝ち目は少ないと思います。


私のところの職員は、裁判に訴えるような人はいないと思いますので、問題は無いと思います。


しかし先生、なぜそのような労働者に不利なことをするのですか。


最近、診療報酬が改悪されるし、競争相手もでき経営的にかなり厳しくなっているからです。


それならば従業員の理解を得ることが大切です。


理解を得るといってもどうやるのですか。経理を公開するのですか。


理想的にはそうすべきかも知れませんが、なかなか大変だと思います。しかし、少なくとも先生も努力している姿を見せなければいけません。そうしないと従業員の不満も増し、職場がギクシャクして雰囲気が悪くなるでしょう。


どこかそういうところありますか。


まったく同じではありませんが私の関与先の旅館では社長が「私も役員報酬を半額にする。だからみんな賃下げに同意してくれ」といって理解してもらったところもあります。


私のところでは私の報酬を下げるほどでもないし…。


それに先生があんな贅沢な外車を乗り回しているようでは説得力はありません。


そうですね。やはりそんなところでケチっても仕方がないですかね。


そうです、賃金はお金であってお金でありません。下げるということはその人の人格を低く評価したと受け取られかねません。みんなが生き生きと働くためにはその辺は注意が必要です。


私の同業者のところで、退職予定の従業員が有給休暇を全部使い切ってからやめるということがありますが、これは認めなければいけませんか。


時季変更権を行使することが日程的にゆとりがなければ、経営者から見れば癪にさわるかもしれませんが認めざるを得ません。


有給休暇を使い切らずに辞めた従業員が、残った有給休暇分を買い上げてくれと言ってきた場合は、買い取らなければなりませんか。


有給休暇は在職しているからこそ権利があるのであって、退職したものは請求する権利がありません。したがって買い取る必要もありません。


有給休暇の買取は違法ですか。


在職中の者の有給休暇を買い取ることは違法とする説が有力です。有給休暇は本来連続して休み、長期の勤続疲労を解消するためのものです。したがって買い取ることは有給休暇の制度の趣旨にも反します。しかし退職し本来権利のないものを恩恵的に買い取ることは違法とはいえないとされています。

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